2024年11月22日(金)

佐藤忠男の映画人国記

2011年11月21日

 笠智衆(1904~93年)は熊本県玉名郡玉水村(現玉名市)の出身。家がお寺で、坊さんになりたくないばっかりに俳優になってしまった人である。しかし私は、小津安二郎監督の命日かなにかの集まりで、笠智衆が立派なお経をあげるのを拝聴したことがある。笠智衆は小津の生涯の殆どの作品に出演しており、小津の名声が世界的になるのと一緒に善意と良識の権化のような彼のキャラクターも世界的になった。

 現役では大地康雄が熊本市生まれ。但し育ったのは沖縄である。不敵な面魂のせいか、悪役が目立つが、達者な演技力で「マルサの女」(1987年)では毎日映画コンクールの男優助演賞を得ている。

 勝野洋は阿蘇郡小国町出身。「太陽にほえろ!」や「鬼平犯科帳」などテレビでいい役が多かった。

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©2011「軽蔑」製作委員会

 いま売り出し中なら熊本市生まれの高良健吾(こうらけんご)だ。「ノルウェイの森」(2010年)や「南極料理人」(2009年)、「軽蔑」(2011年)など評判の作品に引っぱり凧である。

 女優では石田えりが八代市生まれ。「遠雷」(1980年)など、従来の農家の若い女性の役にはない颯爽としたところがあって、アッと言わせたものだった。

 宮崎美子は熊本市の出身。ひかえめだがしっかり者、という役どころではいつも模範的だ。黒澤明の「乱」(1985年)など立派な出来だった。

 夏川結衣は八代市生まれ。「孤高のメス」(2010年)、「奇跡」(2011年)など、評判の作品が多い。

 牛原虚彦(うしはらきよひこ・1897~1985年)は熊本市生まれ。東大を出て映画界に入った最初の人である。当時まだ映画界はやくざな職業と見られていたため、奨学金を出して下さっていた旧藩主の細川家にすまないのではないかと言われ、細川の殿様にお許しを得にあがったところ、ひとりぐらいそんな変わり者がいてもいいのではと言われて大正時代半ばに蒲田撮影所に入って監督になり、無声映画時代の日本にアメリカニズムの軽快なタッチをもたらした。

 いま大活躍中の監督では行定勲がいる。ベストセラー小説による「世界の中心で、愛をさけぶ」(2004年)では大まじめに愛を謳いあげて大ヒットとしたが、「パレード」(2010年)その他、むしろひとひねりも二ひねりもした作品が彼の本領と見られている。


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