2024年4月15日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2019年3月27日

 インドとパキスタンは、ともに核保有国であるから、緊張のエスカレーション、とりわけ核戦争のような事態に至り得るのかは、特に懸念されるところである。これに関しては、Sumit Ganguly(インド文化・文明専門のインディアナ大学教授)が、Foreign Affairsのサイトに3月5日付で‘Why the India-Pakistan Crisis Isn’t Likely to Turn Nuclear’と題する論説を寄稿し、「現在の印パ危機が核戦争になるのではないかとの恐れが表明されることがあるが、そんなことはありそうにない」と論じている。基本的にはその通りであろう。

 戦後の世界が大国間での戦争がないという意味で、平和であったのは核兵器が存在し、その戦争抑止力が強かったからであると思われる。印パ両国ともに核兵器保有国であり、その結果、核戦争を避けることを重視せざるを得ないから、紛争をその瀬戸際までエスカレートさせることを躊躇せざるをえないとの事情がある。その意味で、核兵器は戦後の世界の平和を守ってきたのであり、その論理は印パ関係にも当然適用されるだろう。

 ただ、今回インド側がこれまでの戦闘のルールを変え、LOCを越えたのみならず明確なパキスタン領まで攻撃対象にしたことは、驚きである。インドのモディ首相は、5月までに行われる予定の総選挙で、各州において予想外に苦戦している。モディは強い姿勢を示す必要に迫られている。パキスタンへの強硬な言辞等は出て来るであろう。しかし、パキスタンとの紛争をエスカレートさせ、核戦争の危険を冒すことはないと判断しておいてよいと思われる。パキスタンは捕捉したインドのパイロットを返還し、対話を呼び掛けている。国際社会としても対話による解決を後押ししていくべきであろう。他方、パキスタンはテロリスト・グループを真剣に抑える必要がある。印パの緊張はパキスタン側のテロリストが原因で発生することが多いが、そういうことはパキスタンが防ぐ責務を負っている。

  
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