Washington Files

2019年3月25日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

核開発に踏み切る可能性

 これに対し、ホワイトハウスは会談が行われたこと自体を認めた上で、その目的については「両国協力関係、イスラエル・パレスチナ問題、中東における経済投資などについて協議が行われた」と型どおりの説明だけにとどまった。

 米国大使館高官やスタッフが有力雑誌「Vanity Fair」記者に語ったところによると、これまでの外交慣例によれば通常、米国政府の閣僚や高官らの外国訪問の際には、スケジュールの調整、身辺警護の徹底、滞在中の行事や会談へのスタッフの同席など現地大使館が一切の準備を担当してきたが、今回だけはつんボ桟敷に置かれ、すべてサウジ王室任せで行われたという。

 このため、米議会では今回のクシュナー氏のサウジ訪問で、原発供与問題含め具体的にどのような話し合いが行われ、どの程度の進展があったのかについて、下院監査・改革委員会、外交問題委員会など各関連委員会が近くホワイトハウスから詳しい説明を受ける予定だ。

 対サウジ原発供与問題がここにきて急にクローズアップされてきたのは、もしいったん核技術が同国に渡った場合、核開発に踏み切る可能性が極めて大きいとみられているからにほかならない。

 この点について、前述の下院報告書も以下のように指摘している:

 「多くの専門家は、もし、機密性の高いアメリカの核技術を供与した場合、サウジは核兵器生産に乗り出し、ひいてはすでにきわめて不安定な中東全域での核拡散につながることを憂慮している。げんにモハメド・ビン・サルマン皇太子は昨年の時点で、こう公言している『もしイランが核爆弾を開発した場合、わが国は間違いなく、ただちにそのあとに従うことになる』」

 事実、サルマン皇太子は昨年3月、米CBSテレビ番組で具体的に「わが国は、いかなる核爆弾も確保しようとは思っていない。しかし、もし、イランが核爆弾を開発した場合、われわれは間違いなく、できるだけ早く同じ道を追求していくことになる」と述べた。

 またその数日後には、ファリ同国エネルギー大臣がさらに具体的に「同盟国であるアメリカがわが国に原発技術を提供することは自然の成り行きであり、それに続いて核燃料サイクル、そのモニタリングについても援助してくれることを期待している」と一歩踏み込んで発言、核開発への強い意欲を示し注目された。

 サウジ側のこうした姿勢は、同国の核開発がイランの出方次第にかかっていることを内外に明確に示したものだ。

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