2024年4月19日(金)

家電口論

2019年4月11日

「made in Japan」の弱点はラインナップで吸収

 高品質な「made in Japan」ですが、弱点も持ちます。それは「コスト」です。低価格販売には向きません。今回、日立は絶妙なアイディアで切り抜けています。取った戦術は「ラインナップを限定する」方法です。EP-PF120C / 90Cは、2機種3モデルのラインナップですが、適応床面積が、120C:46〜78m2、90C:32〜54m2なのです。お分かりの通り非常に大きいのです。これは家電大国日本で買っても、安くは買えません。空気清浄機は使用するHEPAフィルターサイズが、コストに大きな影響を及ぼします。適用畳数大というのは、大きなフィルターを使っているということですから、どこで作っても、どうしても高い売価にせざるを得ません。

 理由が明確な高価格帯ゾーンですので、日本での生産が可能ですし、日立ブランドの象徴となるカッコイイデザインも取り入れることができたわけです。

 先日、ハイセンスのテレビが、高機能、低価格で日本市場に働きかけてきたことをレポートしましたが、日立はその真逆の戦略です。高性能、高品質。それをビジュアル化したデザインを引っさげ、もともと価格が高いエリアで名乗りを上げたわけです。日本メーカーの財産「高品質=made in Japan」を上手く活かした戦略といえます。

地域への歩み寄り

 今一番細部まで決まっているGB規格ですが、決まっていないこともあります。それは、フィルターの寿命の算出方法です。

 例えば、スウェーデンのブルーエアー社は、CADRでトップデーターを叩き出しますが、フィルターは半年で替えるように記載されています。ダイソンで1年。ところがシャープは10年とカタログに書かれています。同じHEPAフィルターを使いながら、どうしてこうも違うのでしょうか?

 それは、フィルターの寿命はメーカーが決めるからです。

 実は、日本の標準規格JEMには、フィルターの寿命の決め方が記載されています。タバコ5本/日で汚れた空気をキレイにして、フィルターの能力が50%になる時が寿命です。これに沿うと、確かに、シャープのカタログに記載されているように、10年取り替えずにすみます。しかし、中国のPM2.5の濃度は、タバコより酷く、それが四六時中ですし、日本だって花粉の時期は、毎日膨大な量を処理する必要があります。このため実際には、10年より余程「短命」になります。

 ブルーエアーの空気清浄機の場合、10年使うと、多くの場合は、トータル費用の半分以上をフィルターが絞めます。次に電気代。空気清浄機本体など、30%以下のウェイトしか持ちません。そこまで計算しないユーザーも、フィルターを替えるとかなりの出費になるので、なるべくフィルターは長持ちして欲しいと思っています。

 今回、日立が採用したのは、JEMで能力50%で寿命とされているところを、80%で寿命としました。フィルターの寿命を2年としました。本当にそれでOKなのかは、今から分かることですが、今まで使ってきたJEMに変に固執しなかったのは良いと思います。

 実は、GB規格施行後、それまで認められていたJEM規格での適応畳数などは誤っているものとして、当局が指摘、排除したいう話も聞いております。とにかく日本と中国では状況他まるで異なりますので、やはりメーカーとしても真摯な対応で、その地に馴染むことが必要だと思います。

 今回の空気清浄機『EP-PF120C / 90C』は、よく錬られた「made in Japan」モデル。アジアの各地域への輸出も決まっていますし、余りの出来のよさに、日本での販売も検討されているとか。「日立」ブランドが中国に根付く礎になって欲しいと思います。

  
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