世界で「Sake」(酒)と称される日本酒。世界各地で大人気のヒット商品です。もはや、醸造酒として、ワイン、ビールに継ぐ地位を確立したと言っても言い過ぎてませんし、日本酒の中でも最高級の吟醸クラスになると高値で取引されます。
この吟醸酒は、ビンテージワインと同じで、高温と振動にとても弱く、香りに、味に大きなダメージを受けます。このため「高温と振動がなかったことを保証してくれたらなぁ」となりますが、これがなかなかできない。しかし手段はあるのです。それが固体識別ラベル「RFID」です。
先日、辰馬本家酒造(白鹿ブランド)が旗を振ったRFID導入のための第3回目の実証実験の記者会見がありました。実証実験結果と、導入以降見えてくる日本酒の未来をレポートします。
第1回、第2回実証実験
RFID(電子タグ)は、RF波(ラジオ波)が当たると中の電子回路に記録されている情報をそのラジオ波に載せて返してくれる「個体識別ラベル」(IDはIDカードのID)です。バーコードは型番1つに対し1つですが、RFIDは、製品1つ1つに個別の情報を書き込むことができるところが違います。またRFIDは貼った後でも、随時追加記録が可能です。
使い方によってはいろいろなことができます。
第1回目の実証実験「タイ輸出トレーサビリティー」では、「真贋判定」「温度管理」「トレーサビリティ」の3つの観点で行われました。日本からタイと国を超えた実験ですから、ちょっとスゴいですが、冒頭の通り、日本酒はそこまでする価値がある酒なのです。温度管理はRFIDラベルに小型の温度センサーを仕込み、ビン詰め後の温度履歴が分かるようにしました。
結果は大成功。真贋はもとより、日本国内の輸送、飛行機の中、税関、タイ国内で輸送時の温度履歴がバッチリ記録されていたそうです。お酒の美味しさを損なわずにタイに輸出できたことを、科学的に証明できた瞬間にもなりました。
良い店を使っている人はいいのですが、日本酒は、日本でも偽物が横行しやすい酒です。有名ブランドの空いた酒ビンは裏で高値取引されるほどです。しかし、RFIDだと製品1つ1つが、自分が偽物でないと証明できる履歴をもっているわけですから、安心です。
第2回目の実証実験は倉庫で行われました。こちらは流通を睨んでの「一括大量読み取り」テストです。RFIDのメリットの1つにRF波(ラジオ波)を使っていることがあげられます。ラジオ波が届き、反射して戻ってくる範囲は、たとえ製品を肉眼で捕らえることができなくても、どこにあるのか分かるのです。
お酒の一つの特長に税金が高いことが挙げられます。お酒は、たとえ1本でも、とやかく言われます。このため、メーカー、流通共に重い一升ビンを相手に、肉眼で数量をチェックします。それを何度も繰り返すわけですから、非常に大変。それが段ボール詰めされたお酒が段積みされたパレットに、電波を発すると○○の銘柄が5本、△△の銘柄が20本と答えが返ってくるわけですから、楽になります。
この時は、600本の四合ビンのラベルとビンの首部分にRFIDを貼り付け、テストしました。
こちらの結果は失敗。理由は「結露」だったそうです。電子回路を有しているラベルは水っ気に弱かったということです。
しかし、そこへワインは使い始めたという情報が飛び込んできます。ワインも日本酒と同じようにRFIDをこちらは水分対策したRFIDを使ったとのこと。そのRFIDをコルク近く、つまり輸送時に最も結露しにくいところへ、貼り付けたわけです。
これに力を得て、日本でも水気に強いRFIDを作りました。そして第3回の実証実験。今回は「首掛け」と呼ばれる酒ビン用のポップの裏にRFIDを貼り付けてのテスト。こちらはトラブルもまったくなく、テストが終わる2日前ですが、「実証実験は成功した」ことの記者会見を開いたと言うわけです。