今、全てと言ってもいいほどの多くのメーカーが、中国市場で成功することを狙っています。13億人の民。裕福層が1%として1000万人。と言いますので世界No.1の市場規模です。
中国の友人の話を聞くと、現在の中国は、1980年代頭の日本のようです。当時高度成長を成し遂げた日本は、海外からも「Japan as Number One」と評され、日本のやり方は間違っていない、俺たちはできるんだ、未来は明るいんだという雰囲気でした。当然、活気に溢れ、消費も盛ん。ファッションも、海外有名ブランドが押し寄せて来ていましたし、セレクトショップ、デザイナーブランドが街を賑わせていました。
それに近いのが今の中国。グローバル化の波に洗われ、ファッションも街並みも洗練されてきました。世界各国から、最新の文化、情報、衣・食・住が押し寄せてきます。そんな中に、日本の家電製品も入っています。しかし、ソニーなど、一部のブランドを除き、メーカーブランドの認知は低いそうです。今回レポートする「日立」は認知が低い方になります。
日立は、2019年4月1日、今まで家電の設計・製造および空調の販売・サービスを行ってきた「日立アプライアンス社」と、家電・空調の販売・サービスを行ってきた「日立コンシューマ・マーケティング社」を合併させ、「日立グローバルライフソリューションズ社(以下日立GLS)」を立ち上げました。
そこが手がける第一弾製品は、何と「中国市場向け」の空気清浄機。普通、中国向けの製品は、国内メディアに対してニュースリリースすら出されませんが、今回は別でした。
「Hitachi meets design PROJECT」と名付けられ、デザイン改革を目指した活動の第一弾でもあり、破格の扱いでいろいろなところでお披露目されています。
日立はどのように変わろうとしているのでしょうか?
中国の空気清浄機の現状
皆さんもよくご存じの通り、中国の空気事情は、最悪に近いです。2018年に発表された2016年のWHOの統計データーでも、2016年の都市部でのPM2.5の平均濃度で、中国(北京)は第15位。年間平均濃度:51μg/m3。日本の環境基準が、年平均: 15μg/m3。日平均:35μg/m3 ですから、その汚れっぷりは大したモノです。当然、健康への悪影響は避けられず、空気清浄機が必需品となっています。
そんな中、中国はアメリカで使われている規格「AHAM」を規範にした自国規格を作りました。それが2018年春に施行された「GB規格(中国標準規格)」です。
AHAMからはCADR(クリーンエア供給率)を取り入れています。CADRは、1分で、どの位の空気量をキレイにすることができるのか? を示します。日本のJEM規格では、空気清浄を部屋の空気をキレイにするモノとして捉えています。このため、部分的に空気の出入りがあるオープンスペースに対しては、適当とは言えない部分があります。しかし、AHAMの場合、オープンスペースも考慮して考えられています。このため部屋の空気を何分で浄化するのかではなく、1分間にどれだけキレイに出来るのかで判断するわけです。
GB規格はCADRに加え、日本でも新建材で有名になった「ホルムアルデヒド」の除去も規格化されています。中国のマンションなどの内装はほとんど新建材で、ホルムアルデヒドがバシバシ出てくるためです。日本では建築法により、ホルムアルデヒドがでない、もしくは換気を行い中毒などが起きないように規制されています。そうではない中国では、空気清浄機にホルムアルデヒドの処理も託します。
その他いろいろなことが細かく決められています。そして中国のテスト機関で認証テストを受けクリアする必要があります。それまでは日本国内のJEM規格のデーターを、中国市場でも使っていました。このため空気清浄機を中国で販売するためには、認証テストを受け直さなければなりません。GBはJEMよりかなり厳しいですから、国内でスゴいデータを出している空気清浄機が、GB規格ではありきたりの性能でした、などということもあり得ます。