日本の財務省は、この30~40年の間、いかに市場を自由化するか、いかに規制を緩和するか、という発想で政策を立案してきたから抵抗感が強いだろうが、これくらい大きな発想の転換をしなければ、円高の加速は止められない。
米FRB(連邦準備制度理事会)は「オペレーション・ツイスト」と呼ばれる政策措置で、長期金利の相場に介入している。これは保有している短期国債を処分し、長期国債に乗り換えるもので一種の「フィナンシャル・リプレッション」である。欧州は銀行に強制的に公的資金を投入する動きを見せることで、金融を封じ込めようとしている。いざとなれば日本も大胆な為替管理などを行うという姿勢だけでも市場に見せつける必要がある。
米国や欧州が躍起になっている金融への管理強化には、二つの命題がある。一つは、実体経済に対する配慮だが、隠されたもう一つの命題は、金利が急上昇して国債が暴落するのを防ぐ、ということである。市場や銀行を実質的に管理下に置いて、とにかく金利が上がらぬように、長い時間をかけて徐々に民間から公的セクターへマネーを移動していくのだ。
「無責任な自由」を謳歌して経済を混乱させた金融機関や市場への規制強化はやむを得ない。しかし、その経済への浮力としての役割まで奪われてはならない。国家の暴走を止めるのも金融市場の重要な仕事ではあるが、今や市場機能はすっかり低下して、政府や中央銀行のなすがままである。
残念ながら、欧米はこうしたフィナンシャル・リプレッションを今後も強めていくだろう。その意味ではやはり、マネーが垣根なく自由に移動するというグローバリゼーションは終わったのである。
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