2024年11月25日(月)

中東を読み解く

2019年4月8日

蠢く魑魅魍魎

 ベイルート筋によると、リビアの混乱には、旧宗主国のエネルギー資源利権をめぐる主導権争いが密接に絡んでいるようだ。リビアは1912年からイタリアが植民地として支配。第2次世界大戦中にフランスと英国が占領した。戦後は主にイタリアとフランスが主導権争いを演じてきた。

 フランスがハフタル将軍に肩入れしているのに対し、イタリアは暫定政府との関係が強く、ISがリビアに拠点を築こうとした際には、特殊部隊を派遣し、IS掃討を支援した。主導権争いは和平協議にも及んだ。

 マクロン仏大統領は昨年5月、パリで和平会議を開催し、リビアの各派が大統領選挙と議会選挙を新たに実施することで合意した。しかし、戦闘が激化したこともあり、選挙は延期された。これに対し、イタリアも半年後の11月、パレルモで和平会議を開催し、フランスに対抗した。イタリアの国防相がリビアの治安情勢悪化はフランスのせいと批判し、フランスの反発を買った。

 フランスは今年の2月、イタリアの非難や挑発に抗議するとして、駐イタリア大使の召還を決定し、両国関係は第2次大戦以来といわれるほど悪化した。マクロン政権が激怒したのは、イタリアの連立政権を構成する新興組織「五つ星運動」を率いるディマイオ副首相がマクロン政権に敵対する「黄色いベスト運動」のデモ参加者と面会したことだ。

 こうしたフランスとイタリアの関係悪化や主導権争いがリビア情勢に陰に陽に影響を与えているのは疑いないところだろう。だが、国際法廷から指名手配されているカダフィ大佐の次男セイフイスラム氏が大統領選に出馬するという情報が流れ、またロシアがレバノンで拘留中の三男のハンニバル氏の釈放を働き掛けているとも伝えられている。リビアの混乱の陰で、魑魅魍魎が蠢動し始めている。

  
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