2022年8月14日(日)

WEDGE REPORT

2019年4月22日

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「タミル・イーラム解放のトラ」

 スリランカでは70年代以降、ヒンズー教徒中心のタミル人の分離独立運動が活発化。その後、イスラム教徒とも結び付いたとも言われ「タミル・イーラム解放のトラ」(LTTE)という組織に発展。同組織が北部と東部の分離独立運動の武装闘争を開始し、多数派の仏教徒中心のシンハラ人との間で内戦になった。

 その後、停戦と戦闘再開を繰り返したが、2009年5月、LTTEが敗北宣言を出し、指導者も殺害されて組織が消滅、内戦が終結した。この間、LTTEは駅や空港、繁華街、ホテル、銀行などで自爆テロを繰り返した。96年の中央銀行へのテロでは、約100人が死亡する大惨事となった。

 しかし、内戦終結後は治安が回復して平穏が戻り、日本や欧米からの観光客が年間200万人も訪れるまでになっていた。特に同国周辺の海はダイビングスポットと知られ、多くの人を魅了してきた。在留邦人は1000人弱。

 平和が回復した一方で、宗教的な対立が深刻化。少数派キリスト教徒に対する差別や嫌がらせ、暴力などが増え、米メディアによると、今年だけでそうした事案が26件も報告されている。また仏教徒の過激派がイスラムのモスクなどを襲撃する事件も起きている。

 アナリストによると、犯行に関わった疑いの濃い謎のテロ組織は10年ぶりに蘇った「タミル・イーラム解放のトラ」の残党かもしれない。過激派の動向を追跡している情報グループ「SITE」によると、過激派組織「イスラム国」(IS)の支持者らが、今回のテロをモスクやイスラム教徒に対する攻撃の報復だと主張しているという。

 ISはシリアやイラクで壊滅した一方、世界各地のIS分派が活動を続け、アジアではフィリピンなどに浸透している。パキスタンなど西南アジアには「ホラサン州」と名付けられた分派があり、今回のテロを支援した可能性もないではない。

 同国では昨年、大統領と首相の対立が激化し、首相が解任された後、再び復活するなど政治的な混乱が続いている。対外的には、インドと中国という大国の緊張のはざまで微妙なかじ取りが求められており、テロ事件の発生でスリランカは新たな難題を抱えることになった。

■修正履歴:タイトル、サマリー、本文に置いて「タミル・イスラム」は正しくは「タミル・イーラム」でした。訂正してお詫びいたします。該当箇所は修正済みです。(編集部 2019/4/22 12:00)

  
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