2024年12月23日(月)

WEDGE REPORT

2019年4月19日

 トランプ政権をめぐる「ロシア疑惑」で、バー米司法長官は18日、モラー特別検察官の報告書を公表した。大統領を“忖度”していると批判される司法長官はトランプ陣営とロシアとの共謀、大統領による司法妨害を確定できなかったと強調、大統領は「ゲームオーバー」と勝利宣言した。しかし、報告書は大統領の捜査介入の実態などを赤裸々に暴き出し、事件の幕引きにはなりそうにない。

(mars58/gettyimages)

なぜ司法妨害で結論を出さなかったのか

 今回公表された報告書は大陪審の証言の部分など機密に当たる部分を除く約450ページのほぼ全文。バー司法長官は3月、報告書の概要4ページを公表しているが、今回の最大の焦点はモラー捜査チームが大統領の司法妨害について、なぜシロクロの判断を下さなかったかだ。

 報告書の公表に先立って記者会見したバー司法長官はこれに関し、「証拠不十分」と結論付けたと説明し、モラー特別検察官の法律的見解に同意できない点があったことを明らかにした。モラー氏は「大統領が犯罪を行ったとは結論付けないが、潔白ともしない」としていたが、長官の判断は大統領の立場をより斟酌するものになった。

 長官は大統領が、捜査が自分を貶めるために政敵によって仕掛けられていると確信し、苛立ちと怒りを高めていたと語った。しかし、下院民主党のナドラー司法委員長は長官が報告書の公表前に会見したことに対し「大統領のために世論形成を狙ったメディア・キャンペーンだ」と非難し、機密部分を含め全文を公表させるため、強制力ある召喚状を出す構え。

 そもそもモラー氏が司法妨害について、明確な判断を示していれば、こうした混乱が生じなかったとの声もある。米メディアによると、報告書は判断を下さなかった理由として、2つの重要な要因によって複雑なものになったと言及。1つは現職の大統領が訴追されないという決まりがあること、もう1つは大統領には、政府職員に命令を出す憲法上の大きな権限があることだと記している。

 またもう1つの疑問である「モラー氏が大統領からなぜ直接的に事情聴取しなかったのか」という点について報告書は、最後まで聴取を要求していれば、捜査が大幅に遅れる見通しだったため、断念したとしている。しかし、ペロシ下院議長ら民主党側は司法長官の説明に納得せず、早急に公聴会で質すべく、モラー氏の証人喚問を求める考えを示した。


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