2024年11月23日(土)

Wedge REPORT

2019年5月16日

「みなし額面」方式とは何か?

 私は完全無欠の株価指数は存在しない中で、最も広く用いられている他の算式でなく、欠点もあるが多くの長所があるダウ・ジョーンズ(DJ)算式を採用しているNYダウと日経平均に強い関心を持って研究してきた。そこで本稿ではあらためて問題の元凶である日経平均の「みなし額面」方式についてそれがDJ方式とどのように異なるかという基本を解説しておこう。

 多数の銘柄の中からの採用銘柄の株価をもとに算出される株価指数においては、(1)どのような銘柄を選ぶか、(2)選ばれた銘柄の株価にウェイトの差をつけるか否か、(3)つけるとすればどのようなウェイトをつけるか、そして(4)どのような算式を採用するか、といったことが問題である。

 (1)については指数の目的と銘柄の選定基準が問題になるが、ここではその問題の説明は省略し、まず(2)のウェイトについてはDJ方式では採用銘柄にウェイトの差をつけないこと、そして日経平均は2005年6月にみなし額面方式に移行する前まではDJ方式でありウェイトの差はなかったことを注意しておこう。

 ここでまずダウ式について考えてみるとその算式の分子が株価の単純合計であるということは、全銘柄1株ずつの等株ポートフォリオがベースになっているということであるから、株式分割や株式併合銘柄が発生した場合にはそれによる株数の増(分割の場合)や減(併合の場合)を調整して等株ポートフォリオに組み直すことが必要になり、その前後での平均株価の連続性を保つ(ギャップが生じないようにする)ため算式の分母(これを除数という)が修正される。

 株式分割の場合また銘柄入れ替えの場合には除外銘柄と新採用銘柄の間で株価に差があるため、入れ替えによって分子の単純株価合計は上下(通常は新銘柄が除外銘柄より株価は高いので上昇)するので、入れ替え前後の連続性を保つために、分母(除数)が修正される。このようにダウ式は分子を株価の単純合計のままで、分母を修正するので分母修正方式と呼ばれ、またポートフォリオを等株に調整するための売買が行われることを意味するので私はS&R(Sell and Rebalance)方式と呼んでいる。

 これに対して日経平均が「みなし額面」方式と呼んで2005年6月までのS&Rを変更して採用した方式は、分割や併合による株数の増減が発生してベースとなるポートフォリオが、それにより等株ポートフォリオでなくなってもそのままとして分子は前と変らないようにし、したがって分母の除数も修正する必要なく前のままとする方式である。

 そのため平均株価の分子は、分割あるいは併合後の株価に分割あるいは併合の比率を掛けあるいは割った値で分子の合計を修正計算するので分子修正方式と呼ばれ、私は元のポートフォリオがそのまま保有されるということからB&H(Buy and Hold)方式と呼んでいる。ちなみに、NYダウも当初はB&H方式であったが、それに問題があるということで1928年10月からS&R方式に変更している。

 このように現在NYダウの採っている本来のダウ式は分母修正方式、S&R方式であるのに対して日経平均の「みなし額面」方式は分子修正方式、B&H方式であるという注意すべき重要な違いがある。

 その上、NYダウの場合には株式分割、併合の場合だけでなく銘柄入れ替えの場合にも同じダウ式の除数修正方式によっているのに対して、日経平均の場合には銘柄入れ替えの場合にはダウ式の除数修正方式によらざるを得ず、したがって二つの方式の混合方式になっているということがある。

 そしてさらに、2005年6月までダウ式によってつくられてきた指数に何ら修正を施されることなく非ダウ式の指数がつなげられているという一貫性を欠いた指数となっているということがある。


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