時代錯誤的愚策
そもそも日経平均がみなし額面を採用することになったのは、2000年4月の30銘柄入れ替え、およびその後の入れ替え、株式分割、株式併合の発生するたびに発生した問題のためであった。この問題は証券界で発生した大きな犯罪(これは「引け値保証取り引き」という慣行が悪用された問題で、自著『日経平均と失われた20年』に詳述)に関わり、またその後数年にわたって尾を引いたものであり、そしてその対応に苦慮したと思われる日経平均が考案した時代錯誤的愚策が「みなし額面」による算式の変更であった。
しかし銘柄入れ替えについてはDJ式に従わざるを得ないとして、株式分割および株式併合の場合についてDJ式から離脱したのが「みなし額面」方式であった。
なお、前稿から今日までの間2017年10月1日には、株式の売買単位を100株に統合し、同時に各上場銘柄の必要最低投資金額を5万~50万円とすることを推奨するという全国証券取引所の目標に従うために多数の株価低位銘柄が行う株式併合ラッシュが出現し、日経225銘柄のうちでも35銘柄もの多くが1株を2株(4銘柄)、5株(11銘柄)、あるいは10株(20銘柄)へという株式併合を行った。
当然これらの銘柄すべてのみなし額面は50円よりも高く100円、250円、あるいは500円となり、日経平均のベース・ポートフォリオはダウ式の等株ポートフォリオからさらに大きく離れることになったのである。そして筆者が試算したところダウ式に忠実に従えばこの併合ラッシュによって日経平均の分母の除数は26.581から31.629へと19%も上昇することになるのに不変のままにとどまっていたのである。
ここで当然次に望まれることは高株価銘柄の株式分割であるが、これは株式併合と異なりきわめて難しい問題であり、大幅な分割を含んだ分割ラッシュが出現することはまず考えられない。
地政学的国際関係の中でカジノ化している株式をはじめとする金融商品市場で難航するアベノミクスの重要な評価指標の一つである日経平均の劣化はもはや放置することのできないものになりつつあるといわざるを得ない。「5桁クラブ」の影響は平均株価の上昇局面だけでなく下降局面にも強く現れるから市場の上下変動はそれだけ激しくなるということであり、それは市場がますますカジノ化の傾向を強めるということです。
日経平均はこのような状態をそのまま放置するのか、それともオーソドックスなDJ式に回帰して論理一貫性と整合性を回復するのか、どちらを選ぶにも色々な難題を解決しなければならないというジレンマに直面している。そのジレンマから抜け出る第三の道はあるであろうか?私はその第三の道を真剣に研究しなければならないであろうと考える。
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