産まれた子犬は親の食事を舐め始めると(生後約35日)親から離し、商品となって市場へ流されます。親は健康管理もされず、食事も妊娠期間以外は最低限しか与えられず、病気や産めなくなったら処分。売れ筋の犬種としてのはやりが終わっても処分。完全に商品を生み出すためだけに生かされている状態です。極端な例を示しましたが、繁殖屋と呼ばれる所は往々にしてこのような方式で繁殖を行っています。ブリーダーと比べ、犬質は落ちるため金額は安く取引されるものの、労力も費用も3分の1以下、商品数は数倍の収入となります。
生産責任を問われないという「常識」
業界の常識として、購入者へ繁殖者の情報を伝えないということがあります。最近稀にブリーダーの名前や地域をプライスカードに記載しているショップもありますが、個別に連絡が取れるまでの情報は掲載していません。クレームなどがブリーダー(主に繁殖屋)へ持ち込まれないためです。業界の慣習として、生き物は購入した業者の責任で小売りをする商品であり、目利きした人間の責任と言われます。弱齢動物は健康的にも精神的にも未熟であり、商品としては未完成のもの。つまり「未完成の商品だから、購入後何かあっても不思議でない。だから生産者は責任を負わなくてもよい」という理屈なのです。
最近ペット流通で主流となった生体市場(ペットオークション)の一部では、病原菌や伝染病に関しての責任は繁殖者にあるとして返品可能になっているところもありますが、時間がたってから確認される遺伝疾患などは対象外です。「うちの商品に文句があるのか、あるのならお前にはもう売ってやらない」という古い職人体質や徒弟制度が今も生きているための慣習ですので、歴史のある別の生体市場では今でも御法度のようです。小売店側も、在庫数や予約された犬種などを円滑に仕入れしたい都合上クレームを入れないのが当たり前になっています。残念ながら、そのしわ寄せは購入者にきてしまいます。
せっかく育てる決心をして家族に迎え入れても、すぐに発症する例や生涯病院とお付き合いする結果となる例も少なからずあります。小売店側も生命保証やペット保険などでリスクを軽減させて対応してはいますが、実際は数日でも育てた仔に対する愛情から購入者が泣き寝入りする例が多くあり、これは明らかに購入者への不利益をもたらす行為です。
サイズから色、健康状態や性格まで未確定の商品(命)を購入するのですから、将来的な責任まで考えて購入する必要があるのも事実です。しかしそれ以前に作った(産ませた)側の責任として、繁殖者は消費者が選ぶための最低限の情報、健全性や飼育の環境を伝えるべきなのではないでしょうか。 (第2回に続く)
*新連載「ペットビジネス最前線」
第1回「ラーメンからおせちまで ペットフードビジネスの光と闇」
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