2022年11月26日(土)

WEDGE REPORT

2019年6月1日

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明暗の分かれた「ポピュリスト政党」

 第二の注目はポピュリスト政党である。得票を大きく伸ばした(4.9%から7.7%に増)が、その他EU懐疑派を併せても過半数には至らなかった(27.4%から32.6%に増)。

 一時、「EUの今後を決める選挙」「欧州議会のスターリングラード」といわれ欧州に危機感がみなぎった。しかし、結果は親EU勢力にとりひとまず胸をなでおろせるものとなった。

 だが、そのことはポピュリストの脅威が衰えたことを意味するものではない。EU中核国でポピュリスト政党が躍進した。イタリアではマッテオ・サルヴィーニ氏率いる同盟が33.6%を獲得、先の総選挙で後塵を拝した五つ星運動を抑え第一党に躍り出た。このところイタリアでは同盟の躍進が伝えられている。今回の結果はその事実を図らずも証明した。

 次にフランスだ。エマニュエル・マクロン大統領(共和国前進)がマリーヌ・ルペン氏(国民連合)に負けるわけにはいかないと必死の選挙戦を展開した。結果は、マリーヌ・ルペン氏が23.3%を獲得し勝利した。今後のフランス国内政治に大きく影響してくる。

 これに加えハンガリーではFIDEZが過半数を超え、ポーランドの法と正義も40%を超える等、圧倒的な強さを示した。これらを見ると欧州におけるポピュリスト勢力は依然拡大の一途にあるかのようだ。

 一方、オランダ、スウェーデン、デンマーク等では、ポピュリスト政党は目立った結果を残すことができなかった。ドイツの「ドイツのための選択肢(AfD)」も、前回より3.9ポイント得票を伸ばしたものの、11%という数字は先の総選挙より低い。一部には、ポピュリストの拡大は峠を越したとする者がいないわけではない。

 いずれにせよ議席を増やしたEU懐疑派は、今後、EUの政策を実施するうえでの大きなブレーキ役を演じていくに違いない。

独仏で「緑の党」が躍進したワケ

 第三は緑の党だ。今回、独仏、就中ドイツで著しい躍進ぶりを示した。得票率が20%を超えCDU/CSUに次ぎSPDを抑え第二位につける躍進ぶりだ。一部、シュレースビッヒ・ホルシュタイン州やハンブルク州ではキリスト教民主同盟(CDU)さえも上回り第一党となった。

 これはドイツにおける最近の傾向だ。緑の党が社会民主党にとって代わろうとしている。先に述べた二大政党の凋落と多党化を示す実例でもある。もっとも、欧州議会選挙と国内の総選挙は必ずしも同じでない。ある調査では、ドイツ国民は今回の投票で何を重視したかの質問に対し、48%(前回20%)が「気候変動その他の環境問題」と答えたが国内選挙では必ずしもこうはならない。ただ、この調査で「難民」と答えた者が25%にとどまったことは注目される。

 この緑の党の躍進は、米国民主党左派の躍進(アレクサンドリア・オカシオコルテス氏はグリーン・ニューディールを言う)と併せ興味深い世界潮流である。但し、欧州全般に緑の党が進出しているかというとそうでないところが重要だ。今回、緑の党は西欧、北欧で強く、南欧、東欧でそうでもなかった。南欧(ギリシャ、イタリア等)や東欧では、経済的苦境にあったり発展途上だったりと、国民の関心がなかなか環境保護に向かない実情を表しているかのようだ。緑の党の躍進は欧州政治の大きな注目点だが、この辺りに同党が抱える問題が見て取れる。

 欧州議会選挙の結果は大きくいってこういったところだが、この結果は二つの点で重要だ。欧州委員長、欧州中央銀行総裁等EU幹部人事の行方と各国の国内政治に与える影響である。今週、早速この二つの点で欧州政治が動き始めた。

  
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