オーストリアの極右政党、自由党を巻き込むスキャンダルが発覚しヨーロッパを震撼させている。オーストリアでは、スキャンダルの張本人ハインツ=クリスティアン・シュトラーヒエ副首相兼自由党党首が辞任、与党を組んでいた自由党と国民党の連立が崩壊した。
衝撃はヨーロッパ中に広がり、ポピュリスト政党とロシアの不透明な関係が改めて指摘され、23日から始まった欧州議会選挙への影響が懸念されている。更に、そもそも誰が、何の目的でビデオを隠し撮りしたのか、事実は依然闇の中だ。
ロシアが持ちかけた「黒い取引」
シュピーゲル誌と南ドイツ新聞が5月18日明らかにしたビデオ録画は、2017年7月24日夕刻に撮影された。地中海の保養地イビサにある別荘で、シュトラーヒエ氏(当時、野党自由党党首)、ヨハン・グデヌス氏(現、自由党議員団長)が、プーチン大統領に近いとされるロシア新興財閥イゴール・マカロワ氏の「姪」アレーナ・マカロワ氏と6時間にわたり密談した様子を隠し撮りしたものだ。
ビデオの中で、新興財閥の「姪」は、出所を明らかにできない資金約2億ユーロをオーストリアに投資する予定である旨、同国の有力紙クローネン・ツァイトゥング紙の株式50%を取得する意向であり、そこで自由党に有利なキャンペーンを展開すれば同党が3週間後の総選挙で有利になる旨を述べつつ、その見返りを期待したいとした。
これに対しシュトラーヒエ氏は、「姪」がクローネン・ツァイトゥング紙を買収し、「選挙で自由党を一位にしようとでもいうのなら話に応じたい」としつつ、公益法人を設立しそれを通し資金提供を行えば所管官庁への申告はいらない旨、現在シュトラバークという建設会社が受注している公共事業は、自由党が政権に参加すれば、それ以上の受注が認められることはなく、その分を「姪」に廻すことが可能である旨を伝えた。但し、会談では何らかの具体的な約束を交わすまでには至らなかった。