2024年4月19日(金)

Wedge REPORT

2019年6月17日

ベテランの奥底にある「犠牲的精神」

 ところが、いざフタを開けてみれば、今の炭谷は見事に逆境を跳ねのけている。その炭谷、小林、そして2年目の大城卓三もスタメンマスクを日替わりで変わる捕手3人制はそれなりにうまく機能し、チームも明らかに上昇ムードだ。この流れを作り出す特長こそが、プロ14年目のベテランの奥底にある「犠牲的精神」という。批判的な意見が飛び交っていた中、そんな炭谷の獲得にあえて踏み切った原監督の狙いについても交えながら球団関係者は次のように打ち明けた。

 「まず一番のストロングポイントとして銀仁朗を獲りに行ったのは、パ・リーグを知り尽くしている捕手という点だ。交流戦を優位に戦えばペナントもVに近づけるというのは各球団のセオリー。そのキーパーソンになるとニラんだから原監督も獲得に動いた。ここまでは、まさに『ズバリ』と言い切れるだろう。

 それに加えて小林の能力が高いことは誰もが認めるところだが、正直に言って彼には『慢心癖』がある。その火付け役としても銀仁朗は大きく期待できるというのが、原監督の見立てだろう。実際に小林も出番が昨季より激減しているとはいえ、危機感を覚えながら銀仁朗のベテランの妙技も得ようと必死になっている。

 それに当の銀仁朗も自分が原監督から求められている立場をしっかりとわきまえていることも大きい。小林や大城を蹴落としてまで自分1人が正捕手に居座るという姿勢は見せず、後輩たちから聞かれれば何でも答えていくという兄貴分的な考えを貫いている。これは実を言えばかつて西武時代、銀仁朗が若手時代の森友哉(現在の西武正捕手)に捕手のイロハを教えたやり方とまったく一緒。

 彼がチームの裏側で、いわば捕手陣のまとめ役に徹しているから今の捕手3人制もうまく機能しているのだろう。これが銀仁朗に以前から『チームスポーツに必要な犠牲的精神がある』と言われる理由だ。そういう意味でも原監督の銀仁朗獲得はかなり狙い通りで、今のところ功を奏していると言えるのではないか」

 昨オフに強行されたGの大型補強では、広島東洋カープから移籍して来た丸佳浩外野手が「大成功」と評されて脚光を浴びている。しかし、ここに来て炭谷が「交流戦のキーパーソン」として当初の悪評を払拭しながら暴れまくっていることも見逃してはいけない。 

  
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