2023年1月27日(金)

この熱き人々

2019年7月26日

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吉永みち子 (よしながみちこ)

1950年、埼玉県生まれ。85年、『気がつけば騎手の女房』で大宅壮一ノンフィクション大賞を受賞。著書に『母と娘の40年戦争』(集英社文庫)、『怖いもの知らずの女たち』(山と溪谷社)、『試練は女のダイヤモンド』(ウェッジ)などがある。

 垂直の地層、垂直の壁を掘り進むという難しい作業だったが、尻尾が見つかり、脚、歯が見つかり、やがて胴の部分が姿を現した。そして翌年の第2次発掘でついに頭骨が発見され、17年にハドロサウルス科の新種である可能性を秘めた恐竜の全身骨格発見が発表された。

 「僕は新種だと考えています。すでに論文は投稿しているので、この夏には新種かどうかはっきりすると思います」

 もし新種と認定されれば、小林にとって10種目の新種発見となる。09年にはモンゴルのゴビ砂漠で、50年前にカギツメ状の巨大な前脚の化石が見つかり謎の恐竜と言われてきたデイノケイルス(「恐ろしい手」の意)の全身の化石を発見。長い脚と背中に帆を持つ不思議な恐竜の全貌を明らかにして世界を驚かせてもいる。貴重な化石を次々と見つける小林に、研究者仲間がつけたあだ名は「ファルコン・アイ」。

 「自分でも怖くなるくらい運がいいんですよ。こんなについてていいのかと思うくらい」

 ハヤブサの目を持つ男は、どうやって人の目に触れにくい化石をその目に捉えるのだろうか。

 「地層を見る時に、層の一枚一枚がそれぞれの環境を示しているので、本を読むように一枚ずつ当時の環境を想像するんです。この層は川の流れが速いとか、どんな動物がいてどんな植物が繁っていてとか目に浮かぶ。どのあたりに恐竜が生きていて、どのあたりに埋もれやすいか。きっとこの辺だ! と信じて楽しみながらやってます」

びっしりと書き込まれた発掘ノート

化石探しに没頭した少年期

 発掘の時は探検家、研究室では分析や解析、論文や本の執筆。研究室の机の上には、本の校正刷りが積まれていた。自身による初の発掘記のタイトルは『恐竜まみれ—発掘現場は今日も命がけ』(新潮社)。

 小林のまさに恐竜まみれの人生は、福井県で生まれたことと、中学時代に理科クラブで化石採集ツアーに参加したことから始まっている。

 「全然見つからなくて、暗くなりかけた頃にやっと1センチくらいのアンモナイトを見つけました。1億5000万年前の化石って子供にとってはすごいことで感動しました。自分ひとりで過去と対面できる快感で、それから化石探しに夢中になってました。福井は三葉虫も見つかるし、今日は1500万年前の世界を探しに行こうとか、1億2000万年前に行こう
とか自分で勝手にタイムトラベルしてました」

 化石の知識を蓄えるというより、目の前の石を割って過去へのトンネルを掘っていくのが好きだったようだ。


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