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この熱き人々

2019年7月26日

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吉永みち子 (よしながみちこ)

1950年、埼玉県生まれ。85年、『気がつけば騎手の女房』で大宅壮一ノンフィクション大賞を受賞。著書に『母と娘の40年戦争』(集英社文庫)、『怖いもの知らずの女たち』(山と溪谷社)、『試練は女のダイヤモンド』(ウェッジ)などがある。

 小林は、恐竜研究者は恐竜からのメッセージを現代に伝える役目があるという。2億3000万年前から6600万年前まで1億7000万年もの長い間地球上に繁栄したと言われてきた恐竜は、一体なぜ絶滅してしまったのか。ある日、巨大隕石が衝突して地球の寒冷化によって絶滅したと教えられてきたが、本当にそれだけの理由だったのか。

 「恐竜は最初、数十センチから1・5メートルくらいで小さかったのが、どんどん巨大化したわけです。常に生物は進化すると大きくなる法則があるんですが、空間を支配すると巨大化し数が増え種も増え、形も多様化してくる。さらに空間を求めて地球全体を覆い、それでも巨大化すると環境を破壊していき、うまく自然と共存できないと生存が不可能になるわけです。寒冷化だけでなくそれ以外の要因でも環境が破壊され、それに対応できなかったから消えていったということなんです」

発掘した獣脚類恐竜の末節骨の化石

 今、地球上で絶対的な地位を誇っている人間と重なるところが大きいと小林は言う。恐竜は人間のように知能は高くなかったので、本能で生き、本能のままに消えていったが、人間も恐竜のように本能のままに突き進み絶滅してもいいのかと問う。

 「人間は優れているけれど、それが弱点になっているところもある。電気やパソコンなど特殊な環境に頼り過ぎている人間はかなり脆弱だと思います。今の時の流れから、グーンと引いて巨視的にみると、その中で現在の人間が置かれている立場ややるべきことが見えてくる。やがて人間も絶滅するのは、残念ながら止められない。でもそれを先延ばしすることはできるかもしれない」

 恐竜にはできなくて人間にはできることがあるとしたら、考える力と伝える力。そして引き返す力があるのかどうかにかかっているようだ。

 地球の温暖化により永久凍土が溶けてマンモスが現れ、砂漠化すると化石が見つかる。生物の先輩として、生存環境の劣化への警鐘を鳴らしてくれているようにも感じられる。

 恐竜研究はわからなすぎて面白いと小林は言う。だから、歯の一つから、一片の骨から得られる新しい情報は多い。仮説は次の仮説に塗り替えられながら、一歩ずつ前に進み、過去からの新たな声が伝えられる。

 絶滅したとされてきた恐竜は、鳥に進化することで生き延びたという説は、150年前にドイツで恐竜と鳥の両方の特徴を持つ始祖鳥の化石が発見されてからくすぶり続け、ついに発生学の研究者が、恐竜と鳥の前肢の発生は同じであり、前肢と翼が同じ構造であることを突き止めた。


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