速さの秘密はソールの3本のバー
ビモロシューズは、小山先生が提唱する初動負荷理論Ⓡをシューズで形にしたもので、「Beginning Movement Load Theory」の頭文字から名付けられた。
最大の特徴はソールの3本のバー。歩行やランニングの際に本来の正しい動きを誘導して、脚の筋肉と関節の緊張を自然に解消してくれる。そうすることで足裏が着地した時の衝撃を加速の推進力に変換することができる。
「シューズの着想は80年代からあったのですが、きっかけは平成16年にマラソンの宗兄弟から、選手に負担をかけずに最大限のパフォーマンスを引き出せるシューズを作ってほしいと依頼されたことです」
当初は某大手スポーツウェアメーカーと共同開発を進めていたが、目先の利益ばかりを求めたメーカー側が無断で品質を下げようとしたため、シューズの製品化は頓挫する。
「本当に腹が立ちました! こんなシューズを作って売ったら、自分は筋の通っていない人間になってしまう。そう思いました」
アスリートファーストを貫く小山先生は、改めて単独で自社ブランドの開発を決意する。
平成23年、自分が描く図面を基に精緻なモノづくりをしてくれるシューズデザイナーや職人と、何度も科学的な分析と試作を積み重ね、信頼できる国内の工場に製造を委託して、ついにビモロシューズが完成。平成25年にはスパイクも発売。イチローが履いてブランドの知名度が広がり、今や年間3万6000足を販売。工場もフル稼働である。
「大量生産に向かない特殊なパーツが多くて、商品化した製品には原価率が50パーセントを超えてしまうシューズもありますが、ぼくは今のやり方を変えるつもりはありません。なによりもトップアスリートたちの無償の協力こそが、ビモロシューズの最大の信頼と強みです」
さっそく筆者も、ビモロシューズを履いて館内を走ってみる。おお、すごい! 軽くて、自然と後ろ足が前へ前へとスムーズに出て、「いだてん」の金栗四三(かなくりしそう)みたいに走れる。いであつしだから、いでたんと呼んでください。あんまり速そうなあだ名じゃないなぁ。
(写真・阿部吉泰)
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