2024年11月24日(日)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2012年1月16日

 外交部(外務省)は「ノービザで行ける国・地域が126になった」と外交成果をアピールする新聞広告、台北市(市長は国民党の郝龍斌氏)は2017年ユニバーシアードの招致に成功したとの新聞広告をそれぞれ掲載した。国民党が与党の立場を利用し、税金を使って事実上の選挙広告を出したものだ。

 米中の干渉や、国民党のアンフェアな選挙運動がなければ、馬氏と蔡氏の票差は、もっと小さかったに違いない。

いずれ台湾が中国に飲み込まれる?

 「日本や韓国はいくら対中ビジネスを活発化させても、中国になってしまうことはない。しかし、台湾は中国になってしまう恐れがある」。民進党の独立派イデオローグは危機感を露わにした。

 一方、外省人(戦後大陸から渡台)の国民党官僚が「いずれは台湾も中国のみこまれてしまうかもしれない。そのころ私はこの世にはいないと思うが」と本音をもらすのを聞いて、ぞっとしたこともある。

 台湾の有権者は鋭いバランス感覚を備えている。選挙期間中、馬氏が中国との「平和協定」締結の可能性に触れると、「対中急接近」を恐れて支持率が急落した。馬氏は2期目にこそ対中交渉力の真価を問われる。蔡氏のチャンスは16年に訪れるかもしれない。


◆本連載について
めまぐるしい変貌を遂げる中国。日々さまざまなニュースが飛び込んできますが、そのニュースをどう捉え、どう見ておくべきかを、新進気鋭のジャーナリスト や研究者がリアルタイムで提示します。政治・経済・軍事・社会問題・文化などあらゆる視点から、リレー形式で展開する中国時評です。
◆執筆者
富坂聰氏、石平氏、有本香氏(以上3名はジャーナリスト)
城山英巳氏(時事通信社外信部記者)、平野聡氏(東京大学准教授)
※8月より、新たに以下の4名の執筆者に加わっていただきました。
森保裕氏(共同通信論説委員兼編集委員)、岡本隆司氏(京都府立大学准教授)
三宅康之氏(関西学院大学准教授)、阿古智子氏(早稲田大学准教授)
◆更新 : 毎週月曜、水曜

 


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