2022年8月17日(水)

Wedge REPORT

2019年7月23日

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フィットできる人がいないと、「会社」という船は動かなかった

 アプローチの段階ではカルチャーにフィットすること、具体的には4つのバリュー(Challenge・・・失敗を恐れない、Speed・・・まず、やってみる、Quality・・・妥協しない、Team play・・・気を配る)をすでに兼ね備えている方、もしくは入社後にこれらのバリューを心得て仕事ができると思える方にアプローチをしてきました。

 アプローチをするうえで、まず、ペルソナ(入社してほしい具体的な人物像)を考えたのです。私は長年、人材紹介業で個人(会社員)の転職支援に関わってきましたから、業界、職種ごとに転職の理由がだいたいわかります。通常、会社員が退職するとき、理由のほとんどが人か、条件面のいずれかだと思います。その場合の「人」は、上司や同僚などを意味します。条件面は給与やオフィスの環境、仕事の作り方や進め方、カルチャーなどです。

 ペルソナを設定する際には、まず、弊社に関心を持ってもらえるような人を考えました。弊社は、自社内でエンジニアたちがチームを組んでプロダクトを作ります。基本的にはBtoC(Business to Consumer)ですから、届ける範囲がとても広い。そのような会社で仕事をしたいと思うエンジニアはどのような人なのだろう、と具体的に想像したのです。1つの解として浮かんだのが、IT企業に勤務しながらも、クライアント企業に派遣されているエンジニア、例えば、SIer(エスアイアー)、SES(エスイーエス)などでした。

 私が前職の時にこの職種の人たちにヒアリングをすると、クライアント企業の部署に配属される場合が多いようなのです。中には、背広やネクタイ着用が義務の場合もあるそうです。エンジニアとしてのスキルを高めようとしても、自分の意志で仕事をする機会が少ないとも聞きました。例えば、コードだけでなく、上司やクライアントの依頼で、レポ―トもたくさん書くようです。スキルを高めたいと強く思う人がこの職種に数年携わると、裁量の範囲が狭いこともあり、このままでいいのかなと迷いが生じる場合があるそうです。

 私たちはこのような方を見つけて、メッセージを送りました。書いたポイントは、例えば、次のものです。「自分の裁量でできる仕事が多い」「クライアント先の企業に常駐ではない」「自社プロダクトを開発している」「チームプレーを大事にする」「成長したい前向きなメンバーが多く集まっている」「オフィスがきれいで、働きやすい」…。

 この時期、あえて大手のIT企業や有名なベンチャー企業のエンジニアにアプローチはしていません。その後、2018年に上場し、業績拡大を続けていますから、現在はブランド力や採用力が強化されつつあるとは思っています。有名なベンチャー企業のエンジニアにアプローチすることも可能かもしれませんが、創業期はそのような状況ではなかったのです。

 私は、採用は会社の成長ステージや事業活動、事業の状況とリンクしている、と思っています。少なくとも、社内では常にそのようなことを意識してきました。あの頃、エンジニアのスキルが非常に高い人が、弊社にふさわしい人材であったのかと言えば、必ずしもそうではない場合があるかと思います。あるいは、学歴や職歴が世間一般の捉え方からするとすばらしい人であっても、当時のステージでは必要な人材と言えないケースもあったのかもしれません。

 当時、弊社は大きなエンジンを積んだ船ではなかったのだろうと思います。手漕ぎボートだったのかもしれません。代表や役員、メンバーたちと同じ船に乗り、一緒に手やオールを使い、必死に漕ぐことができるかどうか…。同じ方向に進んでいくことができるか…。そこにフィットできる人が多数いないと、and factoryという船は動かなかったのではないかな、と思います。ダイレクトリクルーティングをする際には、そのあたりのマッチングも重視してきました。

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