今回は、とび職としてセリエコーポレーション(横須賀市)の代表を務める岡本昌宏さん(43歳)を取材した。19歳からとび職として経験を積み、2005年、30歳の時に独立した。
当時から、児童養護施設、少年院、刑務所の出所者などを雇用し、社会復帰までの支援を行ってきた。その数は、80人以上になる。殺人や強盗、窃盗、傷害などの罪や強度のアルコール中毒までと幅広い。男女問わず、16歳から50代までに及ぶ。現在、従業員17人のうち、児童養護施設、少年院、刑務所などの出所者は5人。
2009年には協力雇用主となり、その立場からも出所者などを雇い続けてきた。法務省によると、協力雇用主は、犯罪・非行の前歴のために定職に就くことが容易でない出所者などを、その事情を理解したうえで雇用し、更生に協力する民間の事業主のこと。平成29年の時点で、全国で1万8555社が登録。実際に雇用している企業は少数といわれる。
岡本さんは2016年には、「NPO法人なんとかなる」(横須賀市)を設立した。とび職以外の仕事にも就くことができるように、生活や学習の支援も加えて、自立を支える体制を整えた。寮母さんのいるシェアハウスを設け、衣食住を提供する。全国の少年院や刑務所で講話する活動も続け、職業講話は延べ100回を超える。
とび職の仕事、食事付きの住まい、親代わり(身元引受人)
19歳でとび職に就いて都内や埼玉、神奈川などの工事現場で経験を積み、30歳で独立し、セリエ(個人事業)を設立しました。横須賀市には縁はなかったのですが、新天地で始めることで、それ以前のしがらみを断ち切りたかったのです。まったくのゼロからスタートしました。当時は、私に連いてきてくれた20代のとび職が1人いただけ。腕には自信がありましたから、ありがたいことに仕事は次々と依頼していただきました。現場で腕のいいとび職人が足りないのです。
ハローワークに求人を出したり、地元の高卒(新卒)を対象にした就職説明会にうかがいましたが、エントリーする人はなかなか来ない。その頃から、児童虐待が世間で騒がれはじめました。児童養護施設に関する本を何冊か読んでいくと、家庭環境に恵まれない子が生活をしていることを知りました。彼らが18歳になり、施設を出る時、生活する場所はあるのかなと気になり、訪問したのです。