2024年12月12日(木)

中東を読み解く

2019年8月13日

イラン、米タリバン交渉を利用

 イランはこのように、国家経済を破綻させないよう、石油を売却するため様々な工夫をしているが、米メディアなどによると、トランプ政権への圧力の一環として、米国と反政府イスラム原理主義組織タリバンとのアフガニスタン和平交渉に水面下で影響力を行使しようとしているようだ。

 アフガニスタン戦争は米国にとって18年も続く「史上最長の戦争」。紛争地帯からの米軍撤退を公約にしているトランプ大統領はアフガン駐留の1万5000人の米軍を今年末までに半分程度まで削減し、来年の大統領選挙前までに対テロ部隊を除いて全面撤退させたい意向だ。無論、再選を目指す大統領がアフガンからの米軍撤退を再選の得点にしたいという思惑があるからだ。

 しかし、米軍が撤退すれば、アフガニスタン政府に代わってタリバンが同国を支配するという見方が強い。タリバンが政権に復帰すれば、再びアフガニスタンが国際テロ組織アルカイダなどの温床になる恐れもある。このため、トランプ政権は米軍撤退後にタリバンがテロ組織を排除するよう交渉を続け、双方の合意が近いと伝えられている。

 ベイルート筋によると、イランはこの交渉に対し、タリバンとの友好関係を通じて影響力を及ぼそうとしているのではないかという。ザリフ・イラン外相が最近、イランがタリバンとの協力関係を持っていることを初めて公式に明らかにしたのも、「タリバン・カード」を米国への圧力に使いたい、との思惑を反映したものだろう。

 イランはアフガニスタンにとって最大の貿易相手国で、大きな経済的影響力を持っている。シリア内戦でも、アフガニスタンのシーア派教徒数千人がイラン配下の民兵軍団の一員として参戦している。イランはこのところ、米国の同盟国のアラブ首長国連邦(UAE)と秘密交渉を続け、イラン包囲網に風穴を開けつつあるが、「タリバン・カード」もイランを取り巻く外交環境を変えようとするイランの海外戦略の一環だ。

  
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