2024年12月23日(月)

中東を読み解く

2019年7月21日

 米国がイランの無人機を撃墜し、イラン革命防衛隊が英国のタンカーを拿捕するなどペルシャ湾の軍事的緊張が高まる中、米国の後ろ盾でイランと敵対する連合を組んできたサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)に隙間風が吹き始めた。UAEはサウジ主導のイエメン戦争から撤収を開始、イランとの緊張緩和に向け秘密交渉に乗り出したとも伝えられている。

(adrian825/gettyimages)

タンカー拿捕の力を誇示

 イランの革命防衛隊は7月19日、ペルシャ湾の出入り口のホルムズ海峡で英国のタンカーを拿捕したと発表した。「国際的な航行規則に従わなかったため」と拿捕の理由を説明したが、英領ジブラルタルで英軍がイランのタンカーを拿捕したことに対する報復と見られている。

 このジブラルタルの事件では、イランの最高指導者ハメネイ師が「悪意ある海賊行為」と英国を非難。「彼らはわれわれの船を攻撃し、それを正当化しているが、イランはそうした行動を放置しない」と強く警告していた。英政府はホルムズ海峡でのタンカー拿捕事件の後、「イランの行為は受け入れ難い」と反発する一方、英船籍の船舶に対し、当面ホルムズ海峡に接近しないよう勧告した。

 英国はイラン核合意の維持を支持し、米国の制裁を受けるイランに同情的だったが、今回のタンカーの拿捕合戦でイランに敵対する方向に舵を切り、トランプ政権に同調する可能性もある。そうなれば、辛うじて維持されてきた核合意は完全に崩壊し、イランは自分の首を絞めることになるかもしれない。

 英タンカーの運営会社などによると、タンカーは「ステナ・インペロ」(約3万トン)で、乗組員23人が乗っていた。サウジアラビアに向けて公海上を航行していたところ、イラン革命防衛隊のものと見られる4隻の小型船とヘリによって針路を変更させられた。イランのバンダルアバス港に誘導されたと見られている。英政府はリベリア船籍のもう1隻も拿捕されたとしているが、短時間で解放されたもよう。

 革命防衛隊は18日にも、ホルムズ海峡でイランから燃料100万リットルを密輸しようとした外国のタンカーを14日に拿捕したと発表していた。UAEのタンカーが行方を絶っており、拿捕されたのはこのタンカーの可能性が強い。イラン外務省は当初、行方不明のタンカーから救助要請を受けて、イラン領海に誘導して修理していると説明していたが、革命防衛隊の拿捕の発表と大きく食い違っており、穏健派のロウハニ政権と強硬派の革命防衛隊との内部対立がはからずも露呈された形になった。

 今回の一連のタンカー拿捕事件はイラン側が望む時はいつでもホルムズ海峡などで外国船舶を拿捕することが可能であることを誇示したものだ。米国は海峡を偵察機などで常時監視していると主張しているが、イラン革命防衛隊の高速ボートなどの動きを阻止することが難しいことも浮き彫りになった。


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