2024年6月18日(火)

中東を読み解く

2019年7月21日

UAEの離反

 トランプ政権はこうしたイラン包囲網の一環として、サウジアラビアに16年ぶりに駐留部隊を派遣することで、サウジからの合意を取り付けた。すでにプリンス・スルタン空軍基地には米軍の戦闘機や部隊の一部が到着した。サウジはメッカなど聖地を抱える「イスラムの守護者」。異教徒の駐留には一部から強い反対がある。

 湾岸戦争の際には、王国指導部が米軍の駐留を許したことに反発が広がり、その急先鋒だったオサマ・ビンラディンがサウジを追放され、後に国際テロ組織アルカイダを創設したのはよく知られているところ。今回の米軍駐留はサウジを牛耳るムハンマド皇太子とトランプ政権との親密な関係の上に実現したが、サウジ国内に新たな火種が生まれたことは確かだ。

 こうした米国とサウジアラビアにとって実は深刻な事態が進行中だ。それは対イラン政策でサウジとタッグを組んできたUAEが離反の動きを見せていることだ。例えば、UAEはムハンマド皇太子主導のイエメン戦争で、5000人の部隊をイエメンに派遣し、戦闘を主導してきた。

 そもそもイエメン戦争はイラン支援の武装組織フーシ派がイエメンの実権を握ったことにサウジアラビアが反発して本格的に軍事介入。サウジが主に空爆を担ったのに対し、UAEは“兄貴分”のサウジの求めに応じて空爆の他、地上部隊を派遣して血を流した。

 だが、UAEはこの1カ月で部隊の撤収を開始、イエメン派遣部隊を大幅に削減しつつある。「勝利できない戦争に巨額の戦費と兵力を割くことに嫌気が差した」(専門家)とされるが、実際には、ホルムズ海峡の安全航行が不安定になり、石油輸出に影響が出ることを恐れ、イランとの関係改善を図る思惑が背景にあるようだ。

 UAEのアブドラ外相は先月、ペルシャ湾で相次いだタンカー攻撃について、「誰がやったかは明確で、確実な証拠が必要だ」として、米国やサウジアラビアが主張するイラン犯行説に大きな疑問を呈した。レバノン紙によると、UAEはイランに代表団を送って航行の安全やイエメン戦争からの撤退について秘密交渉も行ったとされ、イラン包囲網の一角に穴が開きそうな雲行きだ。

  
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