背景にあるのは、「原発事故に伴う就労補償が生活保護のようになってしまっている」ことに危機感を覚えているためだ。「もちろん、仕事ができない状態にした東電の責任は大きい」と怒りを押し殺しながら、但野さんはこんな事情を教えてくれた。
「就労不能になれば、以前の収入の不足分は補償され、人によっては、原発事故以前よりも1.5倍ほどの収入になったと聞きます。というのも、家族が町から避難すれば、1人あたり10万円ということもあるからです。もちろん、そうなることを望まない人もいるでしょうが、以前の収入よりも、原発事故に伴う補償のほうが多くなり、就労意欲が著しく失われる人が見受けられます」。話し終えると、但野さんはやりきれないという表情を浮かべた。
南相馬市では、工場が閉鎖されるなどして雇用が失われる一方で、人が戻ってこないことや、就労意欲が削がれることで労働力不足が生じていた。
WEDGE3月号特集 「震災1年 被災地雇用の現実」では、第1部のこちらの記事の他に
以下のテーマで地域の現状についてお伝えしています。
◎生活保護化する原発就労補償(南相馬市)
◎活況の建設土木 その裏で
◎雇用創出に向けた支援の広がり(山田町、石巻市、相馬市)
◎海からの復興で町はよみがえる(気仙沼市、石巻市)
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