これまで物価が上がらなかったから、今後も上がらないのか?
バブル崩壊後の長期低迷期、日本経済はデフレに悩んでいました。デフレというのは、物価が下がっていくことです。物価が下がると企業が売値の低下で苦しくなったり、「借金して工場を建てても作った製品が安くしか売れないなら、やめておこう」と考えるので設備投資が減ってしまったり、経済にはマイナスの影響があるのです。
そこで日銀は、物価上昇率を2%に高めようと頑張っています。しかし実際の物価上昇率は、マイナスこそ脱したものの、なかなか高まって来ません。
そこで人々は、「これまで物価が上がらなかったのだから、今後も上がらないだろう」と考えているようです。しかし、筆者はそれは危険だと思っています。
氷に熱を加えていくと、ある時から急に温度が上がり始めます。氷が融け終わった時ですね。経済にも、そうした変化が生じる可能性があるのです。
少子高齢化と景気回復による労働力不足で、すでに非正規労働者の時給は上昇しています。これまでは、景気回復による利益増加の中から人件費上昇分を捻出して来た企業が、そろそろ耐えられなくなって人件費上昇を売値に転嫁しはじめるかもしれません。
実際、宅配便業界では、各社が値上げに踏み切りました。各社ともに値上げをしたので、各社の客数はそれほど減らず、各社の収入が増えました。これを見て、他の業界でも値上げの動きが広がってくる可能性が高いと筆者は考えています。
業界によって事情が違うので、多少の時間差はあるでしょうが、数年以内には日本もインフレの時代に突入するのではないでしょうか。
ちなみに、ヤマト運輸が値上げをした後で決算が悪化したので、値上げは失敗だったと考えている人もいると思いますが、値上げした結果として収入は増加しているので 、値上げ自体は成功だったのです。
働き方改革により労働コストが増えた事などが決算悪化の原因なので、「やはり値上げをすると決算が悪化するので、値上げはやめておこう」と考える会社が出てこないことを祈ります。
ちなみに、鳥貴族も値上げで売り上げが減ったと言われていますが、これも誤解だと思われます。値上げ後1年を経過しても、既存店売り上げの前年比マイナスが続いているのは、売り上げ減少の真の理由が値上げではなかったということを強く示唆するものだからです。
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