2022年8月18日(木)

Wedge REPORT

2019年9月13日

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馬場未織 (ばば・みおり)

二拠点居住ライター

日本女子大学大学院修了後、建築設計事務所勤務を経て建築ライターに。2007年から平日は東京、週末は千葉県南房総市の里山の二地域で居住する。田舎暮らしなどをテーマに執筆活動を展開。南房総の里山と都市に暮らす人をつなぐNPO法人南房総リパブリックの理事長も務める。著書に『週末は田舎暮らし ~ゼロからはじめた「二地域居住」奮闘記~』(ダイヤモンド社)、『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』(共著・学芸出版社)など。

瓦が飛ぶと雨漏りし、床は変形し、壁には水がしみて身体への影響も大きい

 ただ実際は、家の中は水浸しでぐずぐずだ。畳を干している家もある。どうにかして仮補修したいが、ブルーシートがない。それを押さえる土嚢袋がない。そして何より、素人が屋根の上にのぼって作業するリスクは相当なものだ。

 一方、天気予報を見ると、数日後は雨となっている。

乾かした畳は、その日、また濡れる。

 現在、ブルーシートと土嚢袋は各地からの支援によってだいぶ満たされてきたようだが、まだまだ足りないという情報もある。さらに、何が足りないって、『屋根の上で作業ができる人』がいない。圧倒的に足りない。

 先般話をした市役所の職員さんは、「実家の瓦がけっこうたくさん飛んだので連絡したら、200人待ちで12月以降になるって言われたんですよー」とのこと。ちなみに我が家も瓦が落ちたが、この程度ならば我慢しないと・・・と連絡を控える気持ちが働いた。

 できれば、屋根に上れる職人さんに来てもらいたい。ボランティアでなくていい、きちんとお支払もするから、という切実な声もある。

事態は細かく地域によってまちまち、刻々と変わる中でできること

 「もう食料は足りている」という声もあれば「まだまだ足りない、不安」という声もある。ブルーシートや土嚢も、依然ないところにはない。

 同じ房総半島南端エリアでも、ほんの隣のエリアと自分のエリアでは全然状況が違う、ということが起こっている。そして、互いの状態は通信できないことから分かり合っていない。

 ひとつの声を聞いて全体を知ったつもりになることは危険であり、「足りてるよ!」を信じて、ああもういいのか、と判断するのは拙速だ。

 現在、市の社会福祉協議会は、ボランティアや支援物資の受け入れをするためにボランティアセンターをたちあげている。高齢者世帯など、情報発信のできない家1軒1軒の状態までも知る機関として非常に頼られているが、職員さんは「これまでこんな災害に遭ったことがないので手探りなんです。正直とても緊張しています。それでも、とにかく、全力で頑張りますから!」と呼吸の浅い声を出していた。

 それはわれわれNPOも同じだ。

 これまでいろいろな事業を進めてきたが、災害時のサポートセンターはさすがに運営したことはない。どんな多忙やトラブルがあるのか、詳細の想像までは至らない。それでも「ないよりはあった方がいい」という判断で始めることにした。

 市も、社会福祉協議会も、こうした小さな民間団体も、手探りで支援体制を組もうとしている。それに対してはぜひ、大らかに見ていただき、足らない部分を補完するような動きが生まれてくれると本当にありがたい。

 現地を訪れると、分かる。

 被害に遭った人々は、想像に反し、のんびりとしていて明るい。

 「とりあえず生きてたから大丈夫!」と、手前の瓦礫を掃除しながら、できることを少しずつ進めている。自分の被害をネタに談笑したり、そこから社会的な話題まで広がってお茶の時間が伸びていくのもまたオツなものだ。

 被災という日常を淡々と生きようとする人々に、(誤解を恐れずに言えば)清々しささえ感じる。これは、映画『この世界の片隅に』の伝えたかったことときっと同じはずだ。

 情報は時間ごとに、刻々と変化している。今ここに書いたことも次の瞬間になれば古びるだろう。もう、役に立たない文章かもしれない。

 それでも、来て欲しくはないがまた来るであろう災害時のために、リアルな断面を記した。

 半島の南端に瓦を片付けて雨を心配している人々がたくさんいるのだということを、すこし想像してもらえればと思う。

  
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