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2019年9月14日

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永井隆 ((ながい・たかし))

ジャーナリスト

1958年群馬県桐生市生まれ。明治大学卒業後、東京タイムズ記者を経て、1992年にジャーナリストとして独立。雑誌や新聞、ウェブで精力的に執筆する。著書に『移民解禁 受け入れ成功企業に学ぶ 外国人材活用の鉄則』『EVウォーズ』『アサヒビール30年目の逆襲』『サントリー対キリン』など。

注目される税制改正との闘い

 トヨタ陣営には、ダイハツとスズキという軽の大手2社が入っている。

 実は、90年代半ばから、トヨタでは奥田碩氏らプロパー社長が続き、軽自動車の税制をめぐりトヨタとスズキが対立した経緯があった。特に98年に軽が規格改定された後、軽の優遇的な税制に対して、奥田氏は撤廃論を展開する。奥田氏は自工会会長の後、新生・経団連の初代会長、小泉内閣の経済財政諮問会議のメンバーを務めるなど、”超”のつく大物財界人だった。

 鈴木修氏の後ろ盾は、山中貞則・自民党税制調査会最高顧問だった。”税の神様”と謳われた山中氏は、鹿児島県議から衆院議員となり独学で複雑な税制を学ぶ。税制に関して党税調は絶対的な権力を持ち、小渕氏や小泉氏といった時の総理でも、山中氏を官邸に呼ぶことができずに、山中事務所に足を運ぶほどだった。消費税導入も、山中氏を中心とする党税調が実現させた。

 ”人たらし”の修氏は、89年頃から山中氏に食い込んでいた。しかし、03年衆院選で17回目の当選を果たして間もない04年2月、山中氏は急逝する。ワンマンだった山中氏を失った自民党税調はその後、力をなくしていった。一人に依存する組織の危うさを露呈する。その後、税制改正では官僚の力が増していく。

 15年に軽自動車税は増税されるが、総務省から増税論が浮上した13年秋、鈴木修氏は「軽ユーザーは低所得の方が多く、弱い者いじめだ」と強く反発していた。なお、自動車税は都道府県税だが、軽自動車税は市町村税である。

 「軽自動車は日本独自の規格でありガラパゴス。国際的な競争力にはならないので、もう必要ない」という意見はある。だが、低コストで量産する技術や、車両の軽量化技術など、軽で培った技術が応用されるケースは多い。エンジン排気量やボディーサイズが規定されているなかで開発して量産するため、「創意工夫したモノづくりは軽に求められる」(軽自動車の元開発責任者)。創意工夫こそが、日本型モノづくりの真骨頂でもある。

 国税のビールでも、「発泡酒や第3のビールはグローバルスタンダードではない」と、税制改正が決まる前に意見はあった。この結果、来年、23年、26年の3段階で税率は統一され、第3のビールという区分はなくなる。しかし、酒類は趣向品だが、軽自動車は地方に住む人にとって必需品だ。

 我が国は人類史上前例のない超高齢化社会へと、突き進んでいる。ガソリンスタンドのない過疎地域も、いまや珍しくはなくなっている。

 小さい車両のEV開発はもちろん、何より税制を含めた軽自動車そのものの維持に取り組むことが、スズキがスズキであるための価値なのではないか。軽メーカーとしての誇りを捨ててはいけない。“寄らば大樹”、”いいとこ取り”を目論むだけなら、トヨタ陣営入りしたスズキには独立性など必要ない。

 修会長の長男である鈴木俊宏氏が、社長に就任したのは2015年6月。「チームスズキ」を標榜する俊宏氏への事業承継は、実質的にはこれから本格化していく。それだけに、スズキが独立性を求めるなら、現社長の経営手腕はいよいよ試される。

  
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