2023年12月4日(月)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2019年9月15日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

 今回のテーマは「ボルトン補佐官解任をどう読むか」です。ドナルド・トランプ米大統領は9月10日、国家安全保障問題担当のジョン・ボルトン大統領補佐官を解雇したと自身のツイッターに投稿しました。「戦争屋」と呼ばれた超強硬派のボルトン氏は、なぜ解任されたのでしょうか。その背景には何があったのでしょうか。

 本稿では、ボルトン氏解任に関して外交政策、パーソナリティ及び忠誠心の3つの側面から分析します。

解任されたボルトン大統領補佐官(REUTERS/AFLO)

ボルトンは再選の「邪魔者」

 トランプ米大統領は、「彼(ボルトン氏)はこれ以上ホワイトハウスで働く必要はない。彼の助言の多くに強く反対だった。辞職願を出すように求めた」と自身のツイッターに投稿しました。

 2016年米大統領選挙でトランプ大統領は海外に駐留している若い米兵を本国に戻すと支持者に約束しました。しかし、この公約を果たしていません。

 これまでに筆者は、中西部オハイオ州シンシナティなどで開催されたトランプ集会に参加して支持者を対象にヒアリング調査を実施してきました。彼らは軍事介入に否定的で、駐留米軍撤収に肯定的です。仮に18年にもわたるアフガン戦争に終止符を打つことができれば、トランプ大統領は来年の選挙においてかなりの政治的得点を稼ぐことができます。

 例えば、民主党大統領候補とのテレビ討論会で、トランプ大統領はジョージ・W・ブッシュ元大統領とバラク・オバマ元大統領ができなかったアフガン戦争を終わらせ、自分は「偉業」を達成したと強調して、相手候補にノックアウトパンチを浴びせることができるかもしれません。アフガニスタンからの米軍撤収はトランプ大統領の再選戦略に組み込まれています。

 そこで、トランプ大統領は反政府勢力タリバン幹部をワシントン郊外にある大統領山荘「キャンプデービット」に招き、和平合意文書に署名し、米兵の撤収を実現しようとしました。ところが、ボルトン氏がこの協議に強く反対したと、米メディアは報じています。

 トランプ大統領には、ボルトン氏は再選戦略の実行を阻止する者に見えたのでしょう。同氏は再選の「邪魔者」になったのです。


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