海野素央の Love Trumps Hate

2019年9月15日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

ボルトンは「負の存在」

 北朝鮮との核・ミサイル交渉において、ボルトン氏は「負の存在」になりました。トランプ大統領は、ボルトン氏解任後に行われたホワイトハウス記者団とのやり取りで、同氏が北朝鮮との交渉の場で「リビア方式を持ち出したのは大きな誤りであり、これで交渉が後退した」と明かしました。

 リビアのカダフィ政権は、核を全面的に放棄した後に制裁を解除する「リビア方式」に応じました。しかしその後、政権は崩壊しました。体制維持を最優先する金正恩朝鮮労働党委員長にとって、リビア方式は到底受け入れられない手法です。

 トランプ大統領は民主党のオバマ政権が解決できなかった北朝鮮問題に取り組み、金委員長と人間関係を構築して、核とミサイル実験を中止させました。従って北朝鮮問題は、民主党大統領候補に対する「攻撃材料」としての価値が非常に高いことは明白です。トランプ大統領が金委員長に配慮を示す理由はここにあります。

 にもかかわらず、ボルトン氏はリビア方式を主張して、トランプ大統領が築いた金委員長との人間関係を崩す言動をとったのです。米ワシントン・ポスト紙によれば、2月末にハノイで開催された2回目の米朝首脳会談において両国の交渉担当者によるディナー・ミーティングからボルトン氏を外すように、トランプ大統領が指示を出していたと報じています。同大統領にとって、すでにこの頃からボルトン氏は北朝鮮問題において「負の存在」になっていたことを物語っています。

 さらに悪いことに、ボルトン氏は北朝鮮のみならず、米国の他の敵国との関係構築においても極めて否定的でした。例を挙げてみましょう。

 米メディアによれば、ボルトン氏はトランプ大統領がイランとの核問題に関してロウハニ大統領と会談をして、関係を築くことにも反対の意を表明しました。来年の主要7カ国首脳会議(G7サミット)で議長役を務めるトランプ大統領がプーチン露大統領のサミット復帰を提案すると、ボルトン氏はこれにも反対の立場をとりました。

 トランプ大統領は、「ロシアと関係を築くことは良いことだ」と繰り返し主張しています。同大統領にはオバマ前大統領と関係がギクシャクしていたプーチン大統領とも良好な関係を作り、再選における政治的得点にしようという狙いがあります。

 結局、ボルトン氏はイラン及びロシアとの関係作りにおいても「負の存在」になっていました。

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