中東を読み解く

2019年9月24日

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 サウジアラビアの石油施設攻撃はトランプ大統領の“弱腰”につけ入った「イランの犯行」(米国務長官)という見方が高まるにつれ、ペルシャ湾岸諸国では、オバマ前政権と同様、トランプ政権に対しても不信感が生まれている。とりわけトランプ氏が6月の米無人機撃墜や、今回の攻撃でイランへの武力行使を逡巡したことに「肝心な時に守ってくれない」との疑念が強まっている。

(AP/AFLO)

側近に相談することなく中止命令

 トランプ大統領の戦争嫌いを活写したのがニューヨーク・タイムズ(9月21日付)のホワイトハウスの内幕記事「トランプの撤回したイラン攻撃」だ。同記事は6月20日にペルシャ湾で発生したイランによる米無人機の撃墜事件の際、報復をするかどうかをめぐって大統領が見せた迷いと衝動的な決断ぶりをまざまざと伝えている。

 事件が発生して数時間後の早朝(米東部時間)、ホワイトハウスのボルトン大統領補佐官(当時)の執務室で、同補佐官とポンペオ国務長官、シャナハン国防長官代行、エスパー次期国防長官、ダンフォード統合参謀本部議長らの安全保障チームが対応を緊急協議した。当初、ダンフォード議長らはイランのミサイル搭載小型船舶を攻撃することを提案。攻撃する前にイラン側に通告して乗員を退避させ、死傷者を出さない案だった。

 これに対し、ポンペオ国務長官とボルトン補佐官が十分ではないと異議を唱え、最終的にイランのミサイル発射台とレーダー基地3カ所を攻撃することになった。午前11時、戦況作戦室で、トランプ大統領にこの計画を説明した。この際、攻撃でイラン側に約150人の死者が出る可能性も触れられた。会議では、夜9時の攻撃開始に向けて準備をすることが決まり、安全保障チームは大統領が攻撃計画に同意したと確信し、空母エイブラハム・リンカーンなどが臨戦態勢に入った。

 ダンフォード議長はこの会議後も、150人が死亡する可能性がある攻撃が無人機撃墜と釣り合わないと依然反対し、もし戦争になれば、太平洋地域に展開する米部隊を中東に移動させなければならず、中国を利することになりかねないと主張していた。

 大統領は午後3時、共和、民主両党の議会指導者を戦況作戦室に招いて会議を開催した。大統領は会議ではオバマ前政権によるイラン核合意がいかに悪いものであるかを長々としゃべったが、「攻撃するのか」といった議員の質問には明確に答えなかったし、決めかねているような印象を残した。

 攻撃予定時刻が迫り、ペルシャ湾では少なくとも2隻の米艦船が巡航ミサイル「トマホーク」の発射態勢を取り、上空ではイランの反撃に備えて米軍機も待機に入った。しかし、大統領は土壇場の8時50分になって突然、ダンフォード議長に電話して攻撃の中止を命令、命令は議長から作戦を指揮する中央軍のマッケンジー司令官に伝達された。この中止命令は、ペンス副大統領やポンペオ国務長官、ボルトン補佐官ら側近に一切相談することなく行われた。

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