サウジアラビアの石油施設2カ所が9月14日、何者かの無人機攻撃を受け、同国の石油生産能力の半分が停止するなど世界に衝撃を与えた。イエメンのシーア派反政府勢力フーシが犯行声明を出したが、米国はイラン関与の疑いを強め、トランプ米大統領は「犯人を知っている」と報復を示唆した。イラク南部が攻撃発進源との情報が出回るなどペルシャ湾は緊張に包まれている。
脆弱ぶりを露呈
攻撃を受けたのはサウジ東部ダーランから約60キロ離れたアブカイクにある世界最大規模の石油施設と、首都リヤド東方のクライス油田。同国の8月の原油生産量は985万バレル(日量)で、これは世界の10%に相当する。アブカイブはその原油の多くを処理する施設で、国営石油会社アラムコによると、攻撃で損害を受けた結果、約570万バレルの生産が停止した。クライス油田の生産量は150万バレル(同)である。
サウジと戦争中のフーシは犯行声明の中で、10機の無人機で攻撃したことを明らかにし、これまでもサウジの石油施設や空港などを無人機やミサイルで攻撃してきた力を誇示した。世界の原油市場は敏感に反応し、供給が滞るのではないかとの恐れからニューヨークやロンドンの原油先物相場が一時15%~18%も急騰した。
とりわけ、市場やペルシャ湾岸産油国がショックだったのは、石油施設が無人機攻撃に「あまりにも脆弱」(専門家)な実態を露呈したことだ。サウジは巨額の軍事費を投じて防空網などを強化しつつあるが、こうした最新のシステムが、1機1万5000ドル(160万)程度の安価な無人機にいかに無力であるかを証明してしまった。
フーシの犯行声明に対し、実際はイランの犯行と断じたのはポンペオ国務長官だ。長官は「世界のエネルギー供給に対する前代未聞の攻撃」とイランを非難。「イランはロウハニ大統領とザリフ外相が外交に携わっていると見せかける一方、サウジに対する100回の攻撃に介在している」と決め付けた。
トランプ大統領も名指しはしなかったものの、「われわれは犯人が分かっており、検証次第で臨戦態勢を取る」と述べ、イランの関与が明確になれば、報復攻撃することを示唆した。トランプ氏は6月、米無人機がイランに撃墜された後、いったんはイラン攻撃を命じ、土壇場になって撤回している。
米メディアによると、米当局者は無人機が南方のイエメンからではなく、イラク方面の「西北西」から飛行してきたと述べ、攻撃には無人機とともに巡行ミサイルも使用された疑いがあることを指摘した。イランは「嘘だ」と反発し、一切の関与を否定している。