トランプ大統領は先週末の9月8日、キャンプデービッドの大統領山荘にアフガニスタン内戦の当事者を集めて秘密協議を開催、和平合意を達成して歴史的な偉業としてアピールしようと図ったが、テロで米兵が殺害されたことから急きょ中止に追い込まれた。再選に利用するべく“政治ショー”を演出したかったようだが、思惑は大きく外れ、政権内部の権力闘争も噴出した。
大統領が先頭に立って推進
トランプ大統領はアフガン戦争を終結させ、米兵を帰国させることを選挙公約に掲げ、これを最優先にアフガン政策を進め、昨年秋からカタールのドーハで、内戦の当事者であるイスラム原理主義組織タリバンとの交渉を開始した。今夏までの9ラウンドに及ぶ交渉の結果、次のような大筋合意に達した。
現在、1万4000人の米駐留軍のうち、5000人が正式合意から135日以内に撤退し、タリバンは撤退と引き換えに国際テロ組織アルカイダとの関係を断絶、アフガン国内でのテロやテロ組織の取り締まり強化を保証する。残りの米軍も合意から16か月以内に撤退する、というものだ。
しかし、アフガニスタン政府が拘束するタリバン戦闘員数千人の釈放問題や、ガニ・アフガン政権とタリバンとの和平協議の在り方など対立点も残ったままだった。トランプ大統領は8月に開いたアフガン問題検討会議で、ハリルザド和平担当特別代表が提案した「大筋合意案」を進めるよう指示、土壇場の調整が続けられてきた。
米紙などによると、ハリルザド代表は8月末にドーハでタリバン側に訪米を打診。ガニ大統領に対しては、同じころに大統領宮殿を訪問して訪米提案を伝えた。提案によると、米側が特別機をカブールに派遣し、ガニ氏らアフガン政府高官6人を運ぶ予定になっていた。米国の計画では週末の8日、キャンプデービッド山荘で、米、タリバン、アフガン政府代表の3者による秘密和平協議が行われることになっていた。
キャンプデービッドでの協議開催はトランプ大統領自ら推進した。同地はかつてイスラエルとエジプトによる中東和平に関する「キャンプデービッド合意」など歴史的な偉業が達成された地であり、大統領はアフガン和平と米駐留軍の撤退合意を一気呵成に成し遂げ、その成果を華々しく発表して再選に利用しようとしたようだ。トランプ氏は北朝鮮の指導者、金正恩氏との突然の会談でも見られたように、敵対する人物であっても相手と取引できるという過度の自信があり、今回もそうした思いがあったとの見方が強い。
しかし、9月5日、カブールの米大使館近くで発生したタリバンによるテロで、米兵1人を含む12人が死亡する事件が発生。ホワイトハウスはその日のうちにキャンプデービッド秘密協議と、昨年来のタリバンとの和平交渉を中止することを決め、大統領自ら7日のツイートで明らかにした。