中東を読み解く

2019年9月9日

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ポンペオ、ボルトンの権力闘争激化

 大統領はツイートで「人を殺害して交渉の立場を強めようとするなんて、一体どんな奴らだ」とタリバンを非難。タリバン側も「トランプが(キャンプデービッドで)アフガン政府との対立を解消したいと考えていたなら大きな過ちだ。そもそも政府との交渉は認められていない」と反発、外国のアフガン占領に対するジハード(聖戦)を続けると強調した。

 アナリストの一部は、そもそも政府との交渉を拒否してきたタリバンが今回、キャンプデービッドの協議に本当に同意していたのか不明だと指摘し、秘密協議そのものに大きな疑問を投げ掛けている。安堵感を示しているのはアフガン政府だ。トランプ政権とタリバンだけが先走って合意し、ガニ政権を置いてきぼりにする恐れがあったからだ。

 秘密協議の開催失敗は米政権内部の権力闘争をも鮮明に露呈させることになった。ポンペオ国務長官とボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)の対立である。元々2人はトランプ政権を代表する強硬派だが、米紙ワシントン・ポストなどによると、アフガンの和平と米駐留軍の撤退をめぐって対立が激化、ボルトン補佐官の政権内部の影響力に陰りが見え始めたようだ。

 8月のアフガン問題検討会議でも、ボルトン氏の名前は当初、会議の出席者名簿にはなかった。タリバンとの合意案にボルトン氏が反対していたため、和平を進めたいトランプ大統領の意向が反映され、ボルトン氏が外されたと指摘されている。ボルトン補佐官はタリバンとのいかなる合意にも反対、合意なしでも米軍を撤退させることができるとの主張を展開し、ポンペオ国務長官らと対立している。

 ボルトン補佐官はポンペオ氏が自分をアフガンの政策決定から外そうとしていると非難している。今回、秘密協議が開かれなかったのは、タリバンとの交渉に反対しているボルトン氏の勝利という見方もあるが、トランプ大統領が、協議が行われる予定だったことを暴露した後の釈明は、ポンペオ国務長官がテレビ各局に出演して1人で担っており、大統領の信頼は国務長官の方が強いことが浮き彫りになった。

 しかし、大統領の与党、共和党の有力議員の1人は「キャンプデービッドは9・11の米中枢同時テロの後、米指導者らが米国の対応を検討した場所であり、そうした地に9・11の犯人であるテロ組織を支援したタリバンを招くことは絶対にあってはならない」と強く批判している。再選を意識し、派手な政治パーフォーマンスを演出しようとした大統領にとっては大きな誤算だったことは確かなようだ。

  
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