イスラエル史上初めてのやり直し総選挙が9月17日に迫った。情勢はネタニヤフ首相率いる右派「リクード」とガンツ元軍参謀総長の中道連合「青と白」がデッドヒートを展開中。だが、仮に「リクード」が勝利したとしても、首相が組閣にこぎつけ、新政権を発足させる得るかは不透明だ。“ネタニヤフ時代の終焉”(専門家)が現実味を帯びてきている。
キングメーカー
前回4月の選挙では、「リクード」勢力が120議席うち65議席を獲得し、ネタニヤフ首相が組閣を試みた。しかし、ユダヤ教超正統派の兵役免除を廃止する法案を巡り、推進する極右「わが家イスラエル」と反対する宗教政党の対立が解けずに連立工作は失敗、史上初のやり直し選挙となった。
そもそもイスラエルの総選挙では建国以来、単独で過半数を獲得できた政党はない。今回も「リクード」か「青と白」のいずれか多数派になった方が大統領から連立政権樹立を要請されることになる。ネタニヤフ首相は宗教政党を取り込んで過半数を制し、組閣したい考えだが、思惑通りに進むのはかなり困難、との見方も強い。
こうした中でキャスティングボートを握り、キングメーカーとして存在感を高めているのが「わが家イスラエル」の党首、リーベルマン前国防相だ。同党は人口の約17%を占めるロシア系ユダヤ人を支持基盤としており、世論調査では「リクード」「青と白」がともに30議席を、それに次ぐ「わが家イスラエル」が10議席を獲得し、5議席から大躍進する見通しだ。リーベルマン党首がどう行動するかが連立工作の最大のポイントになるだろう。
存在感を増すリーベルマン氏はユダヤ教超正統派が兵役や税金免除など、あまりに優遇されすぎているとの批判を強め、「リクード」と「青と白」の2大政党による大連立を提案、連立の条件としてネタニヤフ首相の党首辞任を突き付けている。通算在任期間が13年半と史上最長になった首相はこれに強く反発、対パレスチナ強硬路線とトランプ米大統領との親密な関係を強調して巻き返しに躍起だ。