2022年11月27日(日)

中東を読み解く

2019年9月15日

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無視されたトランプへの電話

 こうしたネタニヤフ首相にとって頼みの綱は最大の支援者であるトランプ大統領だ。大統領はこれまで、首相の願望通り、係争の聖地エルサレムをイスラエルの首都と認定、米大使館をエルサレムに移転した。また占領中のシリア領ゴラン高原のイスラエル併合も承認した。首相には最強の味方だったわけだ。

 だが、ここにきて衝撃的な出来事が起きた。それはトランンプ大統領がイスラエルの不倶戴天の敵であるイランとの対話路線への傾斜を強めていることだ。対イラン強硬派だったジョン・ボルトン氏が大統領補佐官を解任されたことも響いた。

 トランプ氏、ポンペオ国務長官ともイランと無条件で対話する考えであることを表明したことにネタニヤフ首相はショックを受けたといわれる。伝えられるところでは、首相はこうした一連の発言を聞いた後、トランプ大統領にイランとの対話に踏み切らないよう説得するため、何度も電話したが、大統領を捕まえることはできなかったという。大統領があえて電話に出なかったことは明らかで、ボルトン氏が切り捨てられたことと自らを重ね合わせたのかもしれない。ボルトン氏が解任されたことで、“Bチーム”は解散状態だ。

 “Bチーム”とは、イランのザリフ外相が命名した対イラン強硬派の4人のことだ。それぞれの氏名の頭文字「B」をもじっている。ボルトン、ビビ(ネタニヤフ氏の愛称)、2人のビン・ムハンマド(サウジアラビアとアブダビ首長国の皇太子)。このうち、ボルトン氏は表舞台から去り、アブダビ首長国の皇太子もイランとの対抗路線から後退し、チームから事実上抜けた。

 残っているのは、サウジのムハンマド皇太子とビビだけだが、ビビもまた選挙後に刑事被告人として追われ、“Bチーム”が完全に崩壊してしまうことも十分にあり得る。一方で17日から始まる国連総会の機会に、訪米するイランのロウハニ大統領とトランプ氏の首脳会談が実現する可能性もある。中東情勢の転変の予感が強まってきた。

  
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