中東を読み解く

2019年9月24日

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反米で結束したイラン

 この内幕記事でも明らかなように、トランプ大統領が新たな戦争を始めれば、再選が危うくなると恐れているのは確かだろう。「米イランの対決は湾岸戦争以来の深刻な状況」(アナリスト)という中、6月の報復攻撃の中止が今回のサウジ攻撃を招いたとする見方は多い。

 「再選失敗のリスクを恐れるトランプは米軍が直接攻撃を受けない限り、報復に踏み切ろうとはしない」(同)。イランはこう“弱腰”のトランプ大統領の足元を見て、サウジ攻撃を企てたというのだ。さらに重要なことはイランの国内が反米で結束しつつあるという事実だ。

 サウジ攻撃を実行したのは、その規模や破壊力、正確性、無人機や巡航ミサイルの航続距離から言って、犯行声明を出したイエメンの反政府勢力フーシ派の可能性はほぼない。イラン革命防衛隊の強硬派が自らイラン基地や、あるいはイラクの配下であるシーア派民兵に武器を供与して実行させた疑いが濃厚だ。

 攻撃はイランの最高指導者ハメネイ師やロウハニ大統領が事前に了承していた可能性は低いと見られているが、ことここに至ってはイランにとって誰が実行したかはあまり問題ではなくなっている。仮にサウジ攻撃が対外秘密戦略を担う革命防衛隊のエリート部隊コッズによる独断作戦だったとしても、今や「イランにちょっかいを出せば地域の全面戦争に発展することを覚悟すべきだ」(ザリフ外相)と穏健派も強硬派と一体となって反米姿勢を前面に出している。

 つまりイランは「トランプの出方を待つ政策」から「トランプに反撃する政策」に転換、報復を招かないギリギリの軍事作戦を展開して米国との有利な交渉に持ち込もうとしているように見える。サウジ攻撃はそういう観点から、米国との交渉で立場を強め、中東地域にイランの力を見せつける形になった。

 トランプ政権にとって気になるのは湾岸の指導者らが「トランプ政権もオバマ前政権同様、有事の際に頼りにならない。口では強硬なことを言ってきただけにより裏切り感が強い」(ベイルート筋)と不信感を出し始めていることだ。オバマ前大統領は2013年、シリアのアサド政権が化学兵器を使用すれば、ミサイルで懲罰すると公約しながら、実際に化学兵器が使われても攻撃せず、サウジなどから総スカンを食った。

 ロシアのプーチン大統領はこうした空気を見透かし早々、ロシア製の防空システムを導入するようサウジなどに働き掛けている。「われわれはサウジを手助けする用意がある。国民を守るため、賢い決断をすべきだ」。トランプ政権とサウジなどとの蜜月に影が差すのも遠い日ではないかもしれない。

  
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