登場人物と捜査範囲
次に相違点です。ロシア疑惑は登場人物が多く複雑でした。ドナルド・トランプ・ジュニア氏、大統領の娘婿ジャレッド・クシュナー氏、元選対本部長のポール・マナフォート氏、個人弁護士のマイケル・コーエン氏、元アドバイザーのロージャー・ストーン氏、リック・ゲーツ氏、元外交顧問ジョージ・パパドプロス氏など、側近の役割に焦点が当たりました。
さらに、捜査範囲が広かったことも確かです。例えば、ニューヨークでのトランプタワーにおけるジュニア氏とロシア人女性弁護士との面会、モスクワの「トランプタワー」建設計画からトランプ大統領の不倫相手とされる2人の女性に対する「口止め料」と選挙資金法違反など広範囲にわたりました。
これに対して、ウクライナ疑惑は米国民に理解されやすい点が特徴です。登場人物は主としてトランプ大統領、ゼレンスキー大統領とウクライナ政府との交渉に当たっているルディ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長並びにウィリアム・バー司法長官です。もちろん主人公は、トランプ大統領です。
ウクライナ疑惑は捜査範囲が狭く、争点は簡潔に言ってしまえば「トランプ大統領が権力を乱用してウクライナ政府の2020年米大統領選挙に対する協力を得ようと圧力をかけたのか」です。
先週24日に弾劾調査を正式に発表したナンシー・ペロシ下院議長は、トランプ大統領が米議会が承認したウクライナに対する軍事支援を保留し、ゼレンスキー大統領に2020年米大統領選挙の協力を求めた「一連の流れ」に注目しています。ペロシ下院議長はトランプ大統領がこの軍事支援と選挙協力を「取引」したとみているのでしょう。ペロシ氏にとって「ウクライナ疑惑」は、米国民に対してトランプ大統領の違法性を平易な言葉で説明できる点で、最大の武器になっています。
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