海野素央の Love Trumps Hate

2019年10月1日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

(AP/AFLO)

 今回のテーマは「『ウクライナ疑惑』と『ロシア疑惑』の類似点と相違点」です。ドナルド・トランプ米大統領が権力を乱用してウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領に圧力をかけ、2020年米大統領選挙の協力を求めた「ウクライナ疑惑」に関する通話記録と内部告発状が公開されました。

 そこで本稿では、まず通話記録と内部告発状のポイントを押さえたうえで、「ウクライナ疑惑」と「ロシア疑惑」の類似点と相違点を分析します。

不自然な「通話記録」

 ホワイトハウスは9月25日朝、トランプ大統領とゼレンスキー大統領との通話記録を公開しました。トランプ大統領は「完璧な会話だ」と豪語し、強気の姿勢を崩していまんせん。

 通話記録が公開される直前まで、複数の米メディアはトランプ大統領がゼレンスキー大統領との電話会談の中で、8回も「圧力」をかけてバイデン前副大統領と次男のハンター氏に対する汚職捜査を要求したと報じていました。ところが5ぺージにわたる通話記録を読むと、「圧力」をかけた場面が見当りません。実に不自然な記録なのです。

 米ウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、実は公開した通話記録は約30分間のトランプ・ゼレンスキー両大統領の会話を一字一句変えずに記録したものではなく、ホワイトハウスの危機管理室及び国家安全保障会議(NSC)のホワイトハウス職員が「ノートと記憶」に基づいて書き起こした文書でした。つまり、完全な通話記録ではなかったわけです。

 公開した記録は、トランプ大統領がゼレンスキー大統領に圧力をかけた箇所をすべて削除したものであるかもしれません。あるいは米国民やメディアがトランプ大統領が圧力を加えたと解釈できないように、ホワイトハウス職員がソフトな表現に書き換えた可能性も否定できません。

 ゼレンスキー大統領に「圧力」をかけたか否かを判断するには、文書の内容に加えて、声のトーン、スピード、沈黙、表情も重要な要素になります。電話会談を聞いていた10数人のホワイトハウス職員は、トランプ大統領の非言語コミュニケーションに基づいて「圧力」をかけたのか、見極めることができたはずです。

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