2023年12月11日(月)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2019年9月19日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

 今回のテーマは「シャーピーゲート」です。ドナルド・トランプ米大統領にとって、日韓GSOMIA(軍事情報包括保護協定)破棄よりも重要なものがありました。トランプ大統領は韓国の文在寅大統領がGSOMIA破棄を発表する前に、同大統領から日韓対立に関して仲介役の依頼があったと明かしました。しかし、トランプ大統領は「仲介はフルタイム・ジョブ」と述べて、介入に消極的な姿勢を示しています。

 米大統領選挙にすでに突入しているトランプ大統領は、「支持基盤固め」に直結しない日韓の衝突緩和に時間を費やしているわけにはいかないのです。これまでに筆者はトランプ大統領が支持者を集めた集会に参加してきましたが、演説の中で日韓関係について触れていません(日本時間9月17日現在)。

 実は、トランプ大統領の関心はまったく別のところにありました。本稿では連日、日本で日韓関係が取り上げられている間、同大統領が何に対してエネルギーを注いだのかについて述べます。

(REUTERS/AFLO)

ハリケーンの進路

 日韓対立が深まる中、トランプ大統領はハリケーン「ドリアン」の進路を巡り、米メディアとの関係をさらに悪化させていました。発端は同大統領が9月1日、ドリアンの被災地に関して「フロリダ州に加えて、サウスカロライナ州、ノースカロライナ州、ジョージア州とアラバマ州が予想よりも(はるかに)大きい打撃を受ける可能性が高いだろう」と自身のツイッターに投稿したことでした。

 それに対して、南部アラバマ州バーミンガムの気象局が「アラバマ州はドリアンの影響を受ける可能性はないだろう」とツイッターに投稿しました。その際、大文字で「NOT(ない)」とつぶやき、ドリアンはアラバマ州に被害をもたらさないと、強調したのです。

 案の定、トランプ大統領は反論しました。ホワイトハウスの執務室で、米海洋大気庁(ノアNOAA: National Ocean & Atmosphere Administration)が作成したハリケーン「ドリアン」の予想進路図を見せて、ホワイトハウス記者団に対して説明を行ったのです。

 ところが、その進路図にはアラバマ州の上に黒色のマジックペンで半円が描かれていました。ドリアンがフロリダ州から北上してサウスカロライナ州及びノースカロライナ州に向かうのではなく、西に移動してアラバマ州に接近するように手書きで修正を加えてあったのです。

 日本の台風を例にとって説明をするとこうなります。今回猛威を振るった台風15号は静岡県に接近した後、関東地方に進むと報じられていました。実際、台風は関東に進み、特に千葉県に甚大な被害をもたらしました。

 仮に誰かが台風の予想進路図にマジックペンを使って、手書きで半円を描き関東地方ではなく、愛知県に進路を変更してあったら、同県民は困惑したに違いありません。


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