来年度の沖縄振興予算は沖縄への特別な配慮を示したい官邸や民主党の強い意向で
今年度よりも636億円増の2937億円となった。
しかも、その半分以上は地元が自由に使途を決めることができる一括交付金制度。
「地域主権」を掲げる民主党のマニフェストでも重要政策と位置づけられるが、
4月からのスタートを前に400億円近くが当初予算に計上されていない。
かねてから沖縄県が要望していた制度のはずだが、なぜこうなるのか。
来年度の沖縄振興予算をめぐり事態が急展開したのは、昨年末のことだ。沖縄県の仲井眞弘多知事は、12月中旬から東京入りして藤村修官房長官と都内のホテルで密会するなど、政府や民主党の幹部との接触を繰り返していた。
沖縄振興を担当する内閣府に情報が入ってきたのは、12月20日。「官邸からただならぬ空気が流れ始めてきたと思ったら、いきなり『県の要望にほぼ満額回答』と。それは驚きました」。担当者はそう振り返る。
小誌2011年12月号でも特集した沖縄振興。これまで10年ごとに4次にわたり国が策定してきた振興計画に代わり、来年度からは県が策定する新たな沖縄振興がスタートする。内閣府の担当者がいう満額回答とは、県が国に要望していた3000億円の沖縄振興予算(今年度は2301億円)と、地元が自由に使い道を決めることができる一括交付金制度の創設に最大限配慮することを意味する。
12月24日には、全閣僚と仲井眞知事でつくる沖縄政策協議会で野田佳彦首相は、来年度の沖縄振興予算として2937億円を確保したことを正式に表明。今年度予算よりも636億円の大幅増で、そのうち半分以上にあたる1575億円を一括交付金とする大盤振る舞いだ。
最大でも2600億円台との観測が強かっただけに、内閣府だけでなく、沖縄県庁内でも驚きの声が出たといい、仲井眞知事の政治力をまざまざと見せつけた形だ。その一方で、密室で決まった経緯からさまざまな憶測を呼び、懸案の普天間飛行場の移設問題に絡んでなんらかの約束が交わされたという観測すら永田町や霞が関で広がった。
使いきれるのか巨額の予算
そもそも、これまで国が策定してきた沖縄振興策のどこに問題があったのか。「本土との格差是正」を目標に、高い補助率による道路や港湾などのインフラ整備を中心に10兆円を超える予算を投下してきたが、沖縄県はいまも全国最低水準の平均所得や失業率にあえぐ。国からの資金投下に依存し、自立した経済を構築するにはほど遠いのが現状だ。
県はその理由の一つとして、これまでの振興予算はひも付きで使い勝手が悪く、住民の細かなニーズに十分に対応できなかったことを挙げる。離島が多く、移動や輸送にコストがかかる沖縄特有の事情や、高い出生率にあわせた子育て支援などにきめ細やかに対応するには、県や市町村が自己裁量で使える一括交付金制度が欠かせないというわけだ。
マニフェストで「地域主権」を掲げる民主党にとっても、一括交付金制度は「地域主権改革の一丁目一番地」と位置づける重要政策だ。沖縄はその先行モデルになるだけに、全国の自治体関係者が強い関心を示すが、永田町や霞が関では「これだけ『ぽん』と上積みされた予算をはたして本当に使いきれるのか。これまでの振興計画のようなバラマキになったりしないのか」などという見方が強い。