米軍基地壊滅を想定した訓練に何を見たか
米軍は9月29日、過激派組織「イスラム国」(IS)に対する空爆など中東・北アフリカ・西南アジア地域の空軍指揮管制センターとなってきたカタールのアルウベイド基地を24時間閉鎖し、サウスカロライナ州の基地にその機能を一時的に移管する訓練を実施した。アルウベイド基地が指揮管制センターになってから初めての措置だ。
なぜこうした訓練が必要になったのか。それはイランとの戦争が勃発し、同基地がイランの弾道ミサイルの攻撃を受けて壊滅状態になったケースに備えてのものだった。逆に言うと、米軍はイランのミサイル攻撃を完全に阻止できない現実を明らかにしたといえる。それはまた、サウジアラビアなどペルシャ湾の同盟国を完全に防衛できないことを示すことにもなった。サウジやアラブ首長国連邦(UAE)の指導者はこの訓練をどう見たのだろうか。
もう1つ、指導者らの気持ちに影を落とした出来事がある。国連総会が開かれていた先月24日の夜、ニューヨークでのことだ。マクロン仏大統領の仲介で、トランプ大統領がロウハニ大統領と電話会談の場を設定したが、ロウハニ大統領が応じなかったという報道である。ペルシャ湾岸の指導者らにとってみれば、米国の尻馬に乗ってイランと敵対してきたが、その梯子をいきなり外されかねないことを見せつけられる形になったと言えるだろう。
フーシとの戦争が一段と泥沼化してきたこともサウジの方針転換の一因だ。フーシが先月末の戦闘でサウジ軍兵士「2000人」を拘束したと発表したように、サウジが仕掛けたイエメン戦争はうまくいっていないどころか、大きな荷物になってしまった。
カショギ氏殺害事件で、サウジへの投資から撤退した多数の欧米企業が近く開かれる「砂漠のダボス会議」に復帰する見通しで、ムハンマド皇太子としては一日も早く、会議を成功させて経済発展の計画を加速させたいところだ。イランとの軍事的対決が続けば、これも不可能になる恐れがある。サウジには、イランとの対話路線に転換しなければならない多くの差し迫った理由がある。
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