2024年11月24日(日)

Wedge REPORT

2019年10月17日

 長谷川氏は現在、業務効率化ツールの活用やアイデアを周囲の社員に広める。また、代理店時代に営業とペアで顧客対応を行うことで休日も柔軟に取得できた経験から、森永乳業でも営業と内勤のペア化を上司に提案している。退職者の価値を見いだしていた人事と、その退職者の持つ力の融合が新たな動きを作っていく。

出戻りだからこそ厳しく見る

 このように、出戻り社員の受け入れは広がり、企業の期待も大きい。出戻り社員に関してエン・ジャパンが実施したアンケート(「企業の出戻り(再雇用)実態調査2018」)によると、受け入れ経験のある企業が再雇用した理由として、「即戦力を求めていた」「人となりが分かっているため安心」などの声が多く、退職後の企業での経験や、既存社員への刺激を期待する声も聞かれる。

 一方で否定的な声も少なくない。「自らの意思で退職した社員をなぜ戻すのかという反発が非常に強かった」など、退職した事実をよく思わない社員の声も上がる。再雇用する予定はないと回答した企業からは、「退職時に会社や上司に対して何らかの不満があったのだろう。再入社後にそれが解消するのか」と辛辣な声もある。実際、最近出戻り社員を受け入れ始めた企業の人事担当者は、「出戻り社員を『裏切り者』と考える社員も一部いるようだ」と声を潜める。

 だからこそ、出戻り社員が以前とどう変わったか、という点を企業は強く意識する。三井物産の古川氏は「一度退職して、外で何を得たのか。その点を面接では厳しく問う。単に外で失敗したから帰ってきました、というのはダメ」と語気を強める。また前例が少ないゆえ、生え抜き社員とのバランスも考慮しつつ、スキルを評価する制度の構築も課題だ。森永乳業の荒木氏は、「戻ってきた社員の処遇は転職後の経験に応じて決定するが、毎回悩ましい問題」と語る。出戻り社員の運用と社内の意識改革を同時に行えるかどうかが、その成否を左右する。

現在発売中のWedge10月号では、以下の特集を組んでいます。全国の書店や駅売店、アマゾンなどでお買い求めいただけます。
■再考 働き方改革
PART 1  働き方改革に抱く「疑念」 先進企業が打つ次の一手
PART 2      労働時間削減がもたらした「副作用」との向き合い方
PART 3      高プロ化するホワイトカラー企業頼みの健康管理はもう限界
PART 4      出戻り社員、リファラル採用……「縁」を積極的に活用する人事戦略

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

◆Wedge2019年10月号より

 

 

 

 

 

 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 


新着記事

»もっと見る