WEDGE REPORT

2019年11月11日

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村野 将 (むらの・まさし)

米ハドソン研究所研究員

拓殖大学大学院博士前期課程修了。岡崎研究所研究員などを経て2019年より現職。日本国際問題研究所研究委員等を兼任。専門は日米の防衛政策、核・ミサイル防衛を含む拡大抑止政策。

 例えば、06年には、中国上空を通過した米国の偵察衛星が地上からレーザー照射を受けていたことが明らかになっている。こういった攻撃を受けると、偵察衛星が把握する画像の一部が不鮮明となり一時的に監視機能が損なわれてしまう(ダズリング)。こうした妨害は、ある軍事作戦の動員準備を活発化させている軍事施設周辺での様子を秘匿する場合などに有効である。

 また、既に中国はGPS信号や衛星通信帯域を妨害する能力(ジャミング)を実証しており、中国沿岸における米軍の無人偵察機の運用を妨害することを試みていると見られ、18年4月には車載式のジャミング・システムを、南沙諸島の人工島・ミスチーフ礁に配備しているのが確認されている。このほか、宇宙管制システムなどへのサイバー攻撃手段を追求している可能性が指摘されている。

自衛隊にも創設された宇宙担当

 米国の宇宙専門家の中でも、中国の対宇宙能力に対処する必要性については一致している。とりわけ、非物理的な対宇宙能力には、人間には認識が難しい、偶然か故意かをリアルタイムに判断しづらい、攻撃者の特定が難しいなどの特性があり、妨害が行われた場合に政策判断に遅れが生じやすい。こうした性質は、攻撃側が妨害行動を起こしやすく、防御側にとっては報復ベースの抑止が効きにくいという点で、宇宙空間においても平時とも有事とも言い切れない「グレーゾーン」が発生しうることを意味している。

 宇宙における「霧」が濃くなる中、各国は宇宙状況監視(SSA)の向上を第一に、組織の再編やシステムの導入を進めている。米国は独自のSSA能力の強化とともに、英国や豪州などと協力した取り組みを進め、また即時打ち上げ能力の強化と低コスト化のための官民連携も強化している。

 日本でも、航空自衛隊に宇宙担当部隊が新編され、米軍との協力を強化していくことが決まっている。また18年末の防衛大綱では、自衛隊も相手の指揮統制・情報通信を妨害する能力を開発していくことが盛り込まれた。こうした対宇宙能力の保持にあたっては、能力開発と同時に米国・関係国との運用上の連携調整を進める必要があるだろう。

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■ポスト冷戦の世界史 激動の国際情勢を見通す
Part 1 世界秩序は「競争的多極化」へ 日本が採るべき進路とは 中西輝政
Part 2   米中二極型システムの危険性 日本は教育投資で人的資本の強化を
             インタビュー ビル・エモット氏 (英『エコノミスト』元編集長)

Part 3   危機を繰り返すEUがしぶとく生き続ける理由  遠藤 乾
Part 4   海洋での権益を拡大させる中国 米軍の接近を阻む「太平洋進出」 飯田将史
Part 5   勢力圏の拡大を目論むロシア 「二重基準」を使い分ける対外戦略 小泉 悠
Part 6   宇宙を巡る米中覇権争い 「見えない攻撃」で増すリスク 村野 将

  
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◆Wedge2019年11月号より

 

 

 

 

 

 

 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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