Washington Files

2019年11月5日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

(iStock.com/flySnow/Purestock)

 トランプ政権発足以来、米議会は内政外交のほとんどあらゆる問題めぐり、与野党間で激しい対立を繰り返してきた。例外は、中国に対する対抗姿勢だ。野党民主党は、対中貿易問題のみならず、安全保障面でも政府の方針を基本的に容認し続けている。米中関係は来年大統領選結果いかんにかかわらず、楽観を許さない状況が続きそうだ。

(Tanaonte/gettyimages)

 その端的例が去る10月24日、ペンス副大統領が行った語気鋭い中国問題演説だった。

 対中強硬派で知られるペンス氏が中国政策に関する主要演説を行ったのは、昨年10月以来2度目だ。今回は、貿易摩擦打開をめざす両国首脳会談の早期開催の観測も高まる中で、とくに注目されたが、結果的には融和姿勢より対抗姿勢の目立った内容だった。

 その中で際立ったのは、香港の抗議運動への言及であり、とくに中国側の感情を逆なでした以下のような“内政干渉”発言だ。

 「香港の抗議運動は、中国が『自由』を受容した時に何が起こるかを知る生きた範例living exampleだ。(抗議参加者たちに向けて)われわれはあなたがたによって魂を呼び起こされている。どうか皆さんが何百万人もの米国民の祈りと称賛の下にあることを知っておいてほしい」

 中国側はその日のうちに激しく反応した。中国外務省報道官は定例会見の冒頭、記者団からの質問を受ける前に、まず用意した声明を下に反論した:

 「ペンス副大統領のスピーチは傲慢、二枚舌、政治的偏見、欺瞞に彩られたものであり、

 到底受け入れがたい。彼は自国政府の政策の失敗について国民の関心をそらすために、中国を材料にしている……」

 米国の外交雑誌「フォーリン・ポリシー」最新号によると、ペンス演説に象徴される厳しい対中批判の背景には、トランプ政権内部で最近、香港の抗議運動と米中貿易戦争をあえて関連付ける“リンケージ戦略”が浮上してきているという。つまり、もし中国が抗議運動鎮圧のために強硬措置に出た場合、貿易協議での米側の妥協がより困難になり、逆に中国側からの譲歩を引き出しやすくなる。そのために、トランプ政権が抗議運動への肩入れを明確にすればするほど貿易協議を有利に進められるという算段だ。

 実際、米中貿易協議はその後、米国ペースで進んでおり、今月半ばには、トランプ大統領が習近平氏を農業州アイオワ州に招き首脳会談を開催、農業・金融部門に限定した「第一段階の合意」文書に署名する予定だ。

 ペンス氏はさらに演説の中で、中国側が公正な土俵での交渉に後ろ向きの態度しか見せていないことに言及「中国が(トランプ以外の)別の大統領を交渉相手に求めていることは、これまでの経済的、戦略的アクションが示しており、アメリカの世論を操作しようとしている」とまで言い放った。中国側には、両国貿易通商問題の抜本的解決のために、次期大統領選挙以後まで待つべきだとする見方もあると伝えられており、この点にクギを刺した指摘と解釈されている。

 しかし、興味深いのはこの間、ナンシー・ペロシ下院議長をはじめとする民主党幹部や議員たちが、このようなトランプ政権の対中国対抗姿勢について、ほとんど沈黙し続けていることだ。

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