Washington Files

2019年10月28日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

(iStock.com/flySnow/Purestock)

 ウクライナ疑惑をめぐる米下院の弾劾調査が加速するにつれて、トランプ大統領の下に一枚岩の結束を誇ってきた共和党内に綻びが出始めている。上院でも一部に造反の動きが出てきた。

 ワシントン・ポスト紙は18日、下院における弾劾関連調査の進展やホワイトハウスの混乱ぶりなど、最近一連の動きを踏まえ、共和党の議員、議員スタッフ20人以上に対するインタビュー結果内容を詳しく報じた。

(mcdustelroy/gettyimages)

 それによると、来年G7サミット開催地として、一時は大統領自らが所有するフロリダ州のゴルフ・リゾートに決定、世間の猛烈な批判を浴びた(2日後に撤回)ことや、ミック・マルバニー大統領首席補佐官代行がウクライナ疑惑関連で軍事援助の“見返り”要求を認める発言をしたことなどを受けて、取材に応じた同党の多くの議員たちが「怒りや反発」感情を露わにした。

 そのうちの一人、フランシス・ルーニー議員(フロリダ州)は、ニクソン大統領が辞任に追い込まれたウォーターゲート事件と今回のウクライナ疑惑との類似性に言及「ウォーターゲート事件調査が始まった当初、マスコミの追及を“魔女狩り”だとする批判があいついだが、真相究明が進むにつれて大統領の弁明しがたい罪状が白日の下にさらされた」として、「今回の場合も、大統領の行動は多くの問題を抱えている」と指摘した。そしてさらに今後の下院調査の進展具合では、本会議の弾劾審議で自らが賛成票を投じる可能性も示唆したという。

 ポスト紙は「トランプ氏のセックス・スキャンダルなどが大きく報じられた数年前までは、共和党は一致団結して大統領擁護に回った。しかし、最近では多くの共和党議員の間で、大統領は支持を当然視して“危険な火遊び”を演じており、もうこれ以上はかばい切れない、といったフラスト感が高じている」とも伝えている。

 問題のウクライナ疑惑究明のここ最近の動きを振り返ると、今月11日、解任されたばかりのマリエ・ヨバノビッチ駐ウクライナ大使が議会調査委に証人喚問され、その中で、トランプ大統領の個人弁護士でウクライナ疑惑と深い関わりがあるとみられるルドルフ・ジュリアーニ氏らがホワイトハウスに圧力をかけ、トランプ政権の対ウクライナ外交政策に同調しなかったことを理由として自らが大使として解任されたことなどを証言した。

 同14日には、最近解任されたジョン・ボルトン氏が国家安全保障担当大統領補佐官だった当時、国家安全保障会議(NSC)ロシア部長を務めたフィオナ・ヒル女史が同調査委で証言、①対ウクライナ政策については、ジュリアーニ氏が国務省の通常の外交チャンネルを飛び越して“影の外交”を仕切って来た②ジュリアーニ氏の行動が目に余るため、ジョン・ボルトン補佐官に相談したところ、事の重大性にかんがみホワイトハウス専任弁護士と相談するよう指示された③ボルトン氏は「大統領シンパたちが取り組んでいるウクライナとの“麻薬取引drug deal”に自分は関わりたくない」と語っていた―などの点を明らかにした。

 同16日、マイケル・マッキンレー前国務長官上級顧問が証言し「在任中、国務省はトランプ―ポンペオ体制の下で“政治色”がきわだつようになり、とくにウクライナ政策に関して、ゼリンスキー大統領に対し、米大統領選の政敵であるバイデン民主党候補の疑惑捜査を進めるよう圧力をかけてきたことに自分は懸念を抱いてきた」「そもそも、米国内の政敵についてのネガティブな情報を集めさせるため、外国政府に働きかけるという行為そのものの重大性と影響を心配してきた」などと述べた。

 さらに同17日には、ゴードン・ソンドランド駐EU米国大使が①大統領自身がウクライナとの様々な交渉に深く関わってきた②具体的な政策の進め方については、大統領はジュリアーニ氏にすべて一任してきた③ゼリンスキー大統領に軍事援助の見返りとして民主党疑惑捜査を依頼したかどうかを大統領にただしたことがあったが、大統領は語気を荒立て「no quid pro quo!」と何度も繰り返した―などと証言した。

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