上院議員の間でも動揺が
共和党は下院議員のみならず、上院議員の間でも、ウクライナ疑惑をめぐる今後の展開をめぐり、水面下で動揺が徐々に広がりつつある。
ワシントン・ポスト紙が20日報じたところによると、共和党上院議員のうち、意思表示していないものの15人近くが、ウクライナ問題に対する政府対応に「懸念と疑問」を表明している。これに対し、38人は「トランプ支持」の立場を明確にしているという。
今のところ、民主党が過半数を占める下院で「弾劾」が成立したとしても、上院で大統領を「罷免」するには議員100人中3分の2以上の支持が必要なため、共和党議員が51人の過半数を占める現状では、大統領の地位は担保されている。
しかし、最近のホワイトハウスの政権運営に「懸念と疑問」を抱く共和党上院議員が15人を超す状況になっていること自体、今後、下院での弾劾審議いかんで、共和党の結束がさらに揺らぐ危険があることを示唆している。
すでに、共和党上院の大物議員として知られるミット・ロムニー氏は、有力誌アトランティック最新号でのインタビューで、大統領を「平気でうそをつき、自分の意に沿わない人物を所構わず罵倒して回るなど、公人としてあるまじき振る舞いが続いている」と批判した上で、トランプ氏の罷免問題については「下院での弾劾審議内容を精査した上で、態度を決める」と述べ、罷免支持がありうることを示唆した。
また、10月23日には、ビル・テイラー駐ウクライナ大使代理が、ホワイトハウスによる疑惑への直接関与を認める重要証言を行ったのを受け、共和党ナンバー2のジョン・チューーン上院議員(サウスダコタ州)がNBCテレビに「弾劾調査の流れを見る限り(共和党にとって)状況は不利になりつつある」と警戒信号を発したほか、マコーネル上院共和党院内総務側近も同日「トランプ・ホワイトハウスが暗黒の瞬間を迎えつつある」との見通しを明らかにした。
このような共和党内の足並みの乱れを受けて、トランプ大統領は21日、ホワイトハウス閣議の場で、報道陣を前に、「共和党の連中は、弾劾に対し断固たるディフェンスをしていない。もっとタフな戦いをすべきだ。民主党は団結していて、ロムニーのような反乱分子はいない。共和党は果敢に反撃に転じない限り、来年選挙で惨めな結果になる」などと、長々と共和党議員たちに対する愚痴と不満を述べた。
これに対し、ペロシ下院議長、シフ下院情報活動委員長ら民主党幹部は今後、できるだけ早い時期にウクライナ疑惑調査をこれまでの非公開証人喚問から公聴会方式に切り替え、国民向けにトランプ大統領の“罪状”を分かりやすい形でアピールし、幅広い支持と理解を得た上で本会議での弾劾審議に移りたい考えだ。
すでにこれまでの民主党下院議員の間での票読みでは、弾劾訴追に必要な過半数を上回る223人前後が「支持」の意向を固めているとみられ、トランプ大統領にとっては、クリスマス休暇入り前に極めて厳しい局面を迎えることになる。
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