2024年12月11日(水)

Washington Files

2019年10月28日

外交において見返りがあるのは当たり前だ

 しかし、政権内部や共和党議員たちの間に最も大きな動揺をもたらしたのは、同じ17日、マルバニー首席補佐官代行がホワイトハウスで行った記者会見内容だった。

 この会見の中でマルバニー首席補佐官代行は、トランプ大統領が今年7月、ウクライナのゼレンスキー大統領に対し、同国への約4億ドル相当の軍事援助の見返りとして、ジョー・バイデン民主党大統領候補親子に対する捜査を行うよう求めたことに関連して「見返りquid pro quoはあったことは事実だ。外交において見返りがあるのは当たり前だ」と、いったんは明言した。

 この「見返り」問題は、議会で追及中の弾劾調査の核心部分に触れる内容だけに、民主党議員たちが色めき立ち、大騒ぎとなった。このため数時間後には「自分の説明が不十分だった」と前言を訂正したが、共和党議員たちの間からも同氏の会見内容を問題視する発言があいつぎ、その後も波紋が広がっている。

 ネガティブな反響の大きさに驚いたマルバニー氏は急遽、19日週末にかけて、共和党の中でも穏健派とみられる下院議員たち10数人を米大統領の山荘として知られるキャンプデービッドに特別招待、泊りがけの“勉強会”を開催した。

 同山荘は歴史的に、歴代大統領が主要国の首脳を招き入れ重要会談を行ったり、米議会の与野党指導者たちを囲んで内政外交の懸案についてひざ詰めで協議する特別の場として知られるが、今回、大統領不在のまま、首席補佐官代行が突然、共和党の一部議員だけを招集したのは、きわめて異例だ。ホワイトハウス事務方責任者としてのマルバニー氏が、政権与党としてのタガの緩みの深刻化に対して、よほどの危機感を抱いたことは否定しがたい。

 “勉強会”は報道陣をすべてシャットアウトして開かれたため、その詳しい内容は今のところ明らかになっていない。しかし、参加者は共和党の中でも、ふだんからトランプ大統領に絶対忠誠を尽くしてきた保守派ではなく、どちらかといえば比較的リベラルとみられる議員たちだけだったことから、米議会関係筋の間では、ウクライナ疑惑調査が進むにつれて、弾劾成立の可能性が高まってきたことを踏まえ、共和党議員の離反の動きを事前にけん制する狙いがあったとの見方が有力だ。

 参加者の一人、ピーター・キング議員(ニューヨーク)は、会合の場では、来年G7サミット開催地としてトランプ一族の保有するフロリダ州ゴルフ・リゾートに一時決定され内外で猛烈な批判が出て計画を撤回したことなど、ホワイトハウスの最近の一連の失態について不満や不安の声も上がったことを明らかにした。


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