Washington Files

2019年11月5日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 これに対し、歴代共和党政権はこれまで、中国に対しては対抗姿勢より、むしろ「戦略的関与」「平和的競争」路線を踏襲してきた。冷戦最中の1972年、電撃的訪中により米中国交正常化の道を切り開いたのは、ニクソン共和党政権だった。

 共和党はその後も、米中経済関係拡大に力を注ぎ、2002年12月、中国の世界貿易機関(WTO)正式加盟が実現したのも、ブッシュ共和党政権の時だった。

来年大統領選に向けて対中国問題で“苦慮”しているのは、むしろ民主党

 今日のように両国間の貿易摩擦がエスカレートするに至ったのは、トランプ政権になってからであり、トランプ政権下の対中外交姿勢はむしろ、伝統的共和党路線より民主党側の主張に近い。

 こうした状況下で皮肉にも、来年大統領選に向けて対中国問題で“苦慮”しているのは、むしろ民主党のようだ。

 ニューヨーク・タイムズ紙は去る8月10日、「貿易問題でトランプよりいかにタフに振る舞うか―民主党の2020年問題」と題する興味ある記事を掲げた。その中で次のように指摘した:

  1. 民主党は長年、「中国を米国産業に打撃を与える『経済的侵略者economic aggressor』と位置付け、北米自由貿易協定(NAFTA)についても、米国労働者の仕事を奪うものだと非難、中国の通貨政策を『自国の製品を安価に米国市場で乱売するもの』として為替操作をやり玉に挙げてきた。
  2. しかし、トランプ大統領は就任後、同様に中国を『為替操作国』と断定、民主党のお株を奪っただけでなく、おもちゃ、ラップトップ・パソコン、シューズなどの中国製品に対して追加関税を課した。
  3. トランプ政権は民主党が非難してきたNAFTAについても、再交渉協議に入っており、民主党同様に“バイ・アメリカン”主義を前面に打ち出している。
  4. この結果、民主党は気まずい立場になり、共和党政権との違いをどう出すべきか苦慮している。党内はトランプ路線と同等かそれ以上に中国に対して厳しく臨むべきだとするエリザベス・ウォーレン、バーニー・サンダース両大統領候補ら急進派と、クリントン、オバマ民主党政権当時のような対中穏健路線を受け継ぐジョー・バイデン候補らの現実派とに意見が2分されている。

 また、ロイター通信も9月9日付けで「対中貿易戦争のエスカレートにともない、民主党は発するメッセージに苦慮」との見出しの記事を配信、バイデン候補の経済担当顧問を務めるジャレッド・バーンシュタイン氏の言葉を引用しながら「トランプがこれまでやってきた対中貿易戦争が、中西部の農民や労働者に悲惨な結果をもたらしてきたと批判するのはいいが、他方で、中国に対してより寛容な態度を示すことなく協議を進展させる代替案はどうあるべきか、民主党側にとってはトリッキーな問題であることはたしかだ」と報じている。

 来年大統領選での再選に向けて、あくまでラストベルト(さびついた工業地帯)や農村票を支持基盤とするトランプ陣営としては、今後も引き続き対中貿易政策については従来通りの厳しい姿勢を貫くことは間違いない。

 一方の民主党側も本来、保護貿易主義、国内産業重視を政策綱領の柱としてきた体質だけに、もし、民主党候補が勝利することになったとしても、果たして対中関係改善が大きく前進することになるかどうか、楽観は禁物だろう。

  
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